会社の経営が行き詰まり倒れる「倒産」
勤めている人々や取引先にとってはとんでもない話ですが、超大型のものから小型のものまで次々と発生しています。
この本では、日本や世界の倒産劇(だいたい、かなりの大型のものばかりです)を、その事情とともに解説しています。
著者はビジネススクールの教壇にも立ち、社会人たちに経営というものを教えているそうですが、企業の経営を見ていくには「成功事例」はほとんど参考にはならないようです。
何と言っても「失敗事例」の方が意味深く、ためになるものなのですが、関係者たちもあまり語りたがらないということで、有名な倒産劇であってもなかなか知られていない事情があるようです。
倒産の背景と言うものには5つの型があります。
戦略上の問題として、「過去の亡霊型」「脆弱シナリオ型」
そしてマネジメントの問題として、「焦りからの脱出型」「大雑把型」「機能不全型」
この5つの型の例として、、有名な倒産事例を分類しながら説明しています。
ちなみに、その区分けとしては次のようになります。
過去の亡霊型:そごう、ポラロイド、MGローバー他
焦りからの逸脱型:山一証券、リーマン・ブラザース他
大雑把型:マイカル、NOVA、林原他
機能不全型:タカタ、シアーズ他
まあかなり有名なものもあれば、ちょっと名前も知らないというのもありました。
カメラのフィルムメーカーとしては全世界に名をとどろかせたコダックですが、19世紀末にそれまでの湿板技術のカメラから大きく発展する乾板技術を自ら開発し、それを広げることで世界のフィルム市場を制覇しました。
しかしそれが「過去の亡霊」となったようです。
史上最大の売り上げ100億ドルをコダックがあげたのが1981年ですが、ちょうどその年にソニーがデジタル技術のカメラを発表しました。
しかし、コダックがそれを無視していたわけではありません。
実はコダックの方がソニーに先立つ1975年にはデジタルカメラの試作機を完成させていました。
しかしカメラだけにとどまらずに「フォトCD」というデジタル写真の保存用機器の製造にこだわり、技術開発の目標が分散してしまい、他社に後れを取り結局は2012年には倒産しました。
これも身についた成功の形というものを変えられなかった結果と見ることができます。
こういった最初の方の「過去の亡霊」型の倒産例はまだ気の毒に感じる点もあるのですが、最後の方の「大雑把型」「機能不全型」といった倒産企業の例は、よくこんな体制で経営していたなというような「呆れた」事例です。
そんな企業でもかつては業界でかなりの力を持っていたということが、私の記憶にもあるくらいですが、やはり潰れるべくして潰れたということでしょう。
NOVAもあのCMは印象深いものですが、全額前もって払い込みの前金ビジネスという危ういもので、金を手にすると顧客への対応も甘くなり、結局は返金訴訟から学生も教師もどんどんと逃げ出すという、どうしようもない状況にしたのも経営のまずさからだったようです。
しかし、こういった教材をもとに勉強をする荒木さんのビジネススクールの生徒さんたち、本当に経営のプロになれるのでしょうか。
どうも、そうとも言えないように思います。