爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ボランティアという病」丸山千夏著

地震や水害といった災害が起きると、行政の働きが届かないところで多くのボランティアが活躍しているということはよく聞きます。

しかし、ほんの一部でしょうが良からぬ話もあるようです。

そういった、「良からぬ話」の数々を取り上げた本です。

 

2016年に起きた熊本地震でも多くのボランティアが活躍しました。

しかし、その中にはちょっとおかしな動きもあったということはあまり広く知られていることではないのでしょう。

熊本県上益城郡御船町は、もっとも被害の大きかった益城町のすぐそばで、ここもかなりの被害を出したところです。

ここの町長が、自らのフェイスブックの中で物資支援を呼びかけたということが、地震の前震が起きたわずか3日後に公開されました。

そして、そこに同席していたのが、一般社団法人とNPO法人の代表二人でした。

この二人は東日本大震災の時にも各地で支援と称した活動で問題を引き起こした人物でした。

そもそも、地震の3日後(しかもまだ本震前)といえば、余震も激しくまた被害者が救出を待っている場合もあるような状況で、この段階ではまだボランティアが入れる余地はないはずです。

そこに無理やり入り込んで、自治体の長に取り入り、県や国に物資不足を報告すべきところを一般に広く呼び掛けるという、おかしな行動を取らせたというのが、これまでにも色々と噂の絶えない人々であったということです。

彼らはネットで募金も呼びかけておりそれは被災地に渡したと言っていますが実際のところは不明です。

 

こういった団体以外にも、何か災害があって避難所などが開設されるような事態になると集まってくる人々がいるそうです。

本人たちには悪意はないのかもしれませんが、被災者たちの役に立ちたいという思いであっても必要以上に被災地に居続けるということもあるようで、各地の避難所を次々と渡りあるくようなことになっているそうです。

 

熊本地震の際も、各地からの援助物資があまりにも大量に届き、その受け入れと整理だけでも多数の場所と人手を費やして自治体が困ったということがありました。

古着などはほとんど捨てるしかなかったようで、その費用も馬鹿にならないようです。

阪神淡路大震災の時から、支援物資は迷惑になるという話があったのですが、なかなか表立って言うこともできず、はっきりと断れないまま続いていますが、経験した自治体などに言わせれば本音は「物資よりお金をください」だそうです。

災害が起きた時、周りから見るだけしかできない人々の気持ちは、良心的な人ほど強くうしろめたさを感じるのでしょうが、そういった人々がその気持ちを埋め合わせるためにやりたくなるのが「物資を送る」ことだそうで、これは「募金をする」よりも強い気持ちになるようです。

心理学者によれば、物資を送る行為がお金を送る行為より「自己効力感」というものが得られるようで、お金は送っても誰が何に使うか想像できなくなるのに対し、物資は確実に被災者が使う(であろう)と考えられるためにその効力感を強く感じるそうです。

 

悪徳団体と言わざるを得ないような団体が被災地には次々と出入りし、ほんの少し活動しただけで成果があがったかのような写真だけとって、それをツイッターフェイスブックに掲載して団体の活動の広告とするような例も頻繁に見られます。

特に「被災地のこども」の映像を欲しがるようで、子供たちを集めてちょっとしたイベントを行いその写真を撮るということが行われるのですが、現在のネットでは写真からの特定も容易であるにも関わらずあまりプライバシー考慮もされていないような例があり、周囲の注意が必要だそうです。

しかし、こういった子供の写真からは簡単に感動というものを得られるため、募金を集める目的もあって後を絶たないようです。

 

多くのボランティアはこういった話とは無縁なんでしょうが、中にはこういった人々も居るんでしょう。

熊本地震熊本県南大水害も危ないところで被害を受けずに済んだのですが、誰がいつ災害被災者になるか分かりません。

その時には気を付けたいものです。