色々な経済ニュースが飛び交っていますが、現役バリバリの経済人でもその本当の意味がわかっていないことは多そうです。
その深いところを理解するためには少なくとも戦後の日本および世界の動向を知らなければなりませんが、ご承知のように日本の歴史教育では戦後のことはほとんど扱われず、その他の科目でも教えられることはありません。
現代の日本や世界経済の動きを知るためにも、少なくともこの本の11の転換点だけは知っておいた方が良いということで、日経のビジネス関係諸誌で編集委員などを勤めた著者がその最低限の説明を施します。
その11とは、「バブル経済」「デフレ」「人口減少」「日米経済摩擦」「日本型経営」「一極集中」「財政赤字」「社会保険料増大」「貯蓄から投資へ」「政治とカネ」「日韓関係」です。
まあ、日経という経済界を代表するようなメディアの中心の人ですので、その観念から一歩も外れるものではありませんので、色々と書いてあることに不満は覚えますが、それは一応ここでは取り上げません。
日本型経営の没落と言う点では、デジタル化とネット化というものがその中心であった熟練というものの価値を消し去ったためだとしています。
終身雇用や現場主義というのも、その熟練というものの価値をフルに活かすことが前提であったものの、誰でもどこでも生産可能となるような変革が起きれば高い日本で作る必要は無くなるからだということです。
しかし、ここでは「本当にそうだろうか」と感じざるを得ません。
この基盤となるべき「グローバル化」というものは、しょせん「格安の運搬」に寄りかかるものであり、その前提が崩れれば全部まとめて崩壊するかもしれないものです。
まあ、それが何時崩れるか、明日かもしれず100年、1000年先かも分かりませんが。
財政赤字の増大ということは、誰もがよく考えておくべきことだというのは間違いありません。
これの経過についてはよくまとまっていて分かりやすい記述と感じました。
高度成長期には黙っていても法人税が入ってくるため、所得税などの減税を続けて納税者を喜ばせました。
さらに池田隼人の取った財政政策にはもう一つの特徴がありました。
それが、「インフラ整備などに税金を直接使うのではなく、郵貯や年金資金運用などの財政投融資を使う」ことでした。
このため、そういった大型インフラ整備について、国民はその道路や橋などが自分の税金で作られているという実感が持てなくなったそうです。
しかし、高度成長が終わってもこの方策を終えることはできませんでした。
減税を止めて増税しようとしても「増税の前に無駄を削れ」の財界や国民の大合唱が起こり、不可能でした。
さらに景気を支えるための公共工事拡大が続き、それにはアメリカの意向も重なり、国債発行が膨れ上がっていきます。
そして、今ではまったく財政立て直しも不可能な状況に追い込まれました。
まあ、異論は色々とあるでしょうが、基本的な事実を捉えるという点では有効な本かもしれません。