日本にやってきて暮らしている外国人、日本語を習う外国人も多くなりました。
しかし、日本人が使っている日本語というものは、学校などで習うものとは違っているところもあり、不思議なものかもしれません。
著者の一人、アン・クレシーニさんはアメリカ出身の言語学者で、日本にやってきて20年ということです。
言語学的に見た日本語というものにも詳しいのでしょうが、それでも日々疑問が湧いてくるようです。
その疑問点を、NHKの元アナウンサー宮本隆治さんに質問し、答えるという体裁で作られた本です。
日本人でも皆が正確に使い分けているとは思えませんが、「微妙な違いで一変する」言葉が数多くあります。
「切ない」「むなしい」「淋しい」「悲しい」「やるせない」などとあげてもこの違いを正確に理解しているという人はあまり居ないのでは。
否定の漢字でも「非」「無」「不」「未」などがありますが、どれがどこに付くのか、これも結構難しそうです。
誤用とも言われる「バイト敬語」、「優しすぎるあまりにきちんと否定しない」、どんどんと曖昧になっていく、といった傾向が強くあるのは、「相手を重んじるあまりに優しくなってしまう」からだとか。
しかし、明確なやり取りが欲しい時に曖昧になっては困ったものです。
最近の若い人が良く使う「大丈夫です」
元々は中国の周の時代に、男性のことを「丈夫」と呼び、その中でも強くて立派な人のことを特に「大」の字をつけて「大丈夫」といったことから起こりました。
そこから、この意味はずっと「非常に強くて安心できる」ということでした。
しかし、最近では「何かを断る時」「許可を得る時」「良し悪しを伝える時」に全部「大丈夫です」を使うようになりました。
これは相互にかなり違いがあるため、混乱の元です。
「ポイントカードはお持ちですか」「大丈夫です」
「レジ袋は必要ですか」「大丈夫です」
「この服試着しても大丈夫ですか」「大丈夫です」
「あのレストランの料理どうだった」「まあ大丈夫」
「バイト敬語」というのも有名なものもありますが、敬語の適切な使い方を知らない人がそれでもとにかく丁寧に話そうという意識で使ってしまうようです。
「1万円からお預かりします」
「コーヒーの方お持ちしました」
「こちら、メニューになります」
「お名前を頂戴できますか」
まあ、あちこちで聞いたような気がします。
さすがに宮本さん、的確な説明をしていますが、一か所だけ間違いと思われるところがありました。
「破天荒」(はてんこう)
「これを「めちゃくちゃな人のこと」だというのは誤りです。」
(というのは合ってます)
その後の説明で「破は相手を打ち負かす、最後までやり抜くを意味する。天は大空や高い所を意味する。荒は荒っぽい、荒々しいを意味する。誰もやったことがないことに立ち向かって、最後までやり抜くという意味になる」と書かれています。
しかし、この語源はかなり有名になっていると思いますが、中国宋代の説話集、北夢瑣言という本の中から取られており、「天荒」は長らく科挙合格者を出していなかった土地、荊州を指していましたが、ようやくリュウゼイ(漢字は難しいので略)という人物が科挙に合格したので、「天荒」を破った、すなわち「破天荒」と呼んだことに由来するということです。
まあ、あらさがしも読書の楽しみ。
特に圧倒されるような内容の場合、時にこういったところが見つかるとホッとします。