爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「世界を変えた10冊の本」池上彰著

本には人を動かす力があります。

池上彰さんが、その中でも特に強く世界を動かした本を10冊選び、その概要を解説しました。

 

選んだ10冊とは、

アンネの日記」「聖書」「コーラン」「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(マックス・ウェーバー)「資本論」「道しるべ」(サイイド・クトゥブ)「沈黙の春」「種の起源」「雇用、利子および貨幣の一般理論」(ケインズ)「資本主義と自由」(フリードマン

です。

 

アンネの日記」が選ばれているのは少し意外かもしれません。

しかし、この本の存在がユダヤ人迫害の事実を強調し、特に西欧での贖罪感を引き起こしたために、イスラエルが中東で行なっている行動に対して西欧からの反発を弱めることになったというのは明らかな事実でしょう。

もしこの本が無ければ中東問題は別の道をたどっただろうということは言えるかもしれません。

 

マックス・ウェーバーの本は「宗教が経済に与える影響」を分析したという見立てです。

資本主義はヨーロッパで発展したのですが、特にプロテスタントの国で進化しました。

それがアメリカに至って、暴走とも言えるほどになったのですが、そこにもプロテスタントの教義が関わっていたということです。

ただし、行き過ぎた分はさすがに宗教的な意味からは離れたのでしょうが。

 

サイイド・クトゥブの「道しるべ」はそれほど知られてはいないかもしれません。

クトゥブはエジプトでナセル大統領暗殺を謀って失敗し逮捕されたムスリム同胞団のメンバーの一人で、獄中でこの「道しるべ」を書きました。

これがその後イスラム原理主義に走る人々、ビンラディンなどの思想を形成したと言われています。

内容は現行のイスラム教は世俗にまみれているので打倒しなければならないという原理主義的なものなのですが、その他の宗教、キリスト教ユダヤ教だけでなく世界のすべての宗教も打倒の対象とするというもので、それが世界に危険を生み出しました。

 

ケインズの本はケインズ理論の中心となるものですが、それ以前にはこのように国家が経済に大きく関わるということはタブー視されていたのですが、それを主張しアメリカが恐慌後の復興にこれを採用したことで成功しました。

現在に至るまで基本的にこれが世界を動かしているとも言えます。

 

フリードマンの本は新自由主義を立ち上げたとも言えるものですが、これも現代の政治経済に強い影響を及ぼしています。

 

確かに、これまでの世界を動かしてきたものとして、この10冊の本は大きな存在感を示しています。

ただし、「これからの世界を動かす」本はまだ出現していないのでしょう。

どこにも見当たらないようです。

 

世界を変えた10冊の本

世界を変えた10冊の本