爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「代替医療 効果と利用法」蒲原聖可著

代替医療とは、英語のalternative medicine の訳語で、「もう一つの医療」という方がその性格を良く捉えているかもしれませんが、普通はこの代替医療という言葉を使っています。

 

これは一言でいえば「現代西洋医学以外の医学・医療のすべて」を指すもので、具体的には鍼灸療法や漢方、サプリメントやハーブによる栄養療法、インドの伝統医学アーユルヴェーダ、指圧やマッサージ、ホメオパシーなどです。

他にも伝統医学や民間療法と呼ばれるものも含みます。

 

これらの代替療法は通常は健康維持や増進、予防医学といった方面に目標を置くものが多いため、現代西洋医学の問題点、慢性疾患に弱いということや生活習慣病増加、国民健康保険の赤字といった点についてそれを補完できる可能性もあります。

しかし、中には現代医学とはまったく相容れない性格のものもあり、また患者の弱みに付け込んで金儲けを狙うと言ったものまで含まれています。

 

代替療法は欧米でもかなり浸透しており、国によって違いはありますが、かなりの金額が流れこむ大産業となっているようです。

アメリカでも1993年になって初めて代替医療の現状が調査されたのですが、それは予測をはるかに越える利用者数、費用を獲得しており、さらに年々増加していました。

最も多かったのがリラクゼーションであり、その中には瞑想や磁気・磁力を使う治療法が含まれていました。

他にもマッサージ、カイロプラクティック、エネルギー療法といったものが大きな割合を占めていました。

ヨーロッパではそこが発祥のホメオパシー催眠療法の利用者が多いという特徴があります。

またフランスやベルギーではオステオパシーカイロプラクティックは医師によって行われているため、代替医療としては扱われないという特徴もあります。

 

日本では鍼灸やマッサージ、整骨など腰痛や肩こりに効果があるとされる民間療法が一定の地位を占めていますが、それ以外にも「最後の頼み」と「きれいになりたい」という要望に応えるような代替医療が盛んに行われています。

つまり、慢性疾患や末期がんのように現代医学からは思うような治療ができない患者が「最後の頼み」として駆け込む種類のもの。

そして、特に女性が「きれいになりたい」という用途のために試す様々なものです。

 

 本書では現状の代替医療の紹介だけでなく、「どのように利用したらよいか」という点についても多くのページを割いています。

日本では特に、現代西洋医学で教育を受けてきた医師が代替医療に通じているということはほとんどありません。

その教育課程では代替医療の講義は全く無く、医師となった後に自分で調べるという人以外にはその知識を得ることはありません。

そのため、我々が代替医療を受けようと考えた時に、かかりつけ医に相談するということが非常に難しくなっています。

場合によっては病院で診察を受ける際に代替医療を受けていることは内緒にするということもしばしば起きています。

ここはやはり、代替医療を受ける前に現代医学の診察を受けておく必要はありそうです。

これは、自分の症状が過労やストレスによるものだと自己判断するだけでは、重大な病気が見逃される恐れがあるためです。

また、いくら代替医療が穏和なものであっても、現在の現代医学で施されている治療と合わない場合もあるからです。

そのため、かかりつけ医が代替医療に理解があるかどうかに関わらず、報告をしておく必要はあります。

医師があまりにも代替医療に否定的な場合は医師を変える必要があるかもしれません。

 

しかし、現状では代替医療の中にも相当怪しいものや、商業主義の強いものもあり、それを見分けることも重要なようです。

 

最終章には、「代替医療から統合医療へ」という表題が付けられています。

いつまでも「代替」にとどまることなく、科学的に検証され有益なものだけが残り、現代西洋医学と統合されてもっとも患者にとって適切な治療ができるようになることが最良なのですが、そのためには代替医療側の成長と共に、医学界の方でも医師の意識改革、医療制度の変革も必要となります。

患者にとっては「代替医療」であっても「現代医学」であっても、関係なく健康になれればそれが良いわけです。