「総合エネルギー学」というものを振興していく必要性について前段で示しましたが、その具体策としてはやはりどうしてもEPR(Energy Profit Ratio) (言ってみれば”エネルギー産出比”)を徹底的に見直すというところから始まるでしょう。
以前から参考にさせて頂いている、近藤邦明さんの「環境問題を考える」
では様々な考察がされていますが、風力発電のEPRを「0.50程度」としています。
https://www.env01.net/main_subjects/global_warming/contents/s001/e002/energy.pdf
一方、国立環境研究所の名前で出されている資料では、洋上風力発電の発電時のEPRが19などという値が出されていました。
www.nies.go.jpここまで高い値と言うのは珍しいほどですが、「風力発電研究者」たちの出してくる値はいずれも低いものでも10を少し切る程度です。
近藤さんの出す値とは、実に1ケタ以上も離れています。
しかし、風力発電装置というのは出力は非常に分かり易いものです。(なにしろ発電しかできません)
そして、その装置の耐用年数というものだいたいわかってきています。
してみれば、その出力エネルギーというものはおよそ検討は付きますが、その20分の1の入力エネルギーで装置の製造、建設ができるなどとは到底信じることはできないでしょう。
EPRという値は非常に常識的にも分かり易い定義がされており、(出力エネルギー)/(入力エネルギー)という直感的にも理解できるような計算式です。
しかし、これを実際に計算していこうとすると大変な事であるのはすぐに分かります。
その解説を、研究者らしい人物が書いたウィキペディアを見てみると、
さすがにその装置の原料調達から建設、運転維持、廃棄まで含めたライフサイクルアセスメントをやるべきだとは書かれています。
しかし、「そんなことが本当にできるのか」
エネルギー産出装置の専門の研究者と言われる人たちは多いのでしょうが、彼らが本当に「原料調達の現場のエネルギー消費」の実態を知っているでしょうか。
せいぜい、そちらの専門家の書いた報告を基にした値を引用しているのでしょう。
実はここに大きな問題点があります。
エネルギー装置の専門家以外には「入力エネルギー」を正確に見積もるという考え方が浸透しているとは言えないのでは。
鉱石採掘の専門家、精錬の専門家、鉄鋼製造の専門家、そういった上流の専門家がそれぞれの工程を深くご存じでしょう。
同様に、解体廃棄の専門家もいらっしゃるのでしょうが、それも工程自体の把握はできており経済上の最適化、廃棄物の有害問題などは詳しく検討されているでしょう。
しかし、こういった専門家たちが「エネルギー問題」を深く考えているとは思えません。
つまり、このような上流下流(そして中流域も)のすべての工程で加算すべき入力エネルギーには大きな数え落としがあるのではないかという疑問があります。
その意味で、「すべての工程」についてのエネルギーというものを見直す専門家として「総合エネルギー学」の専門研究者が必要だと考えています。
実は現状ではおそらくほとんどの「自然エネルギー装置」(風力発電や太陽光発電等々)を製造しているエネルギーは「化石燃料」であると考えられます。
太陽光発電装置の変換パネル製造工場を動かしているのも化石燃料や、それで作られた電気や蒸気、風力発電装置を建設する土地を整地しているのも重油燃料の重機、羽根を作っているのも同様でしょう。
これらを「絶対に化石燃料は使わない」こととしたら、操業できるかどうかが問題となります。
だからこそ、エネルギー産出比が重要となってくるわけです。