爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「食材偽装」森田満樹編著

2013年秋、阪急阪神ホテルズがレストランでのメニュー表示が実際の食材と異なっていたことを公表しましたが、それに続いて各地のホテル、高級百貨店、レストランなどが同様の事例を次々と公表するということになりました。

 

それ以前にも「偽装表示」という問題は多かったのですが、この時の事例の多くは悪質なものとばかりは言えず、法令の知識不足が原因であったり、業界の通例でやってしまったというものが多かったようです。

しかし、消費者に誤解を招くようなことであったのは間違いなく、そういった問題の発生を防ぐにはどうするかということを解説したのが本書です。

 

 発端となった阪急阪神ホテルズの最初の公表事例は、実は問題のあるものとないものとが混在しています。

どこがどう問題なのかと言うことが認識されていないということを明示している状況でした。

例えば、エビの品種を違うものに表示したり、ビーフステーキと表示して加工肉を出したり、有機農産物でないものを有機と表示したり、産地を違うものと表示することは明らかに景品表示法上問題があるものですが、同時に公表された「鮮魚と称して冷凍品を使った」「レッドキャビアと称してトビウオの魚卵を使った」というのは実は問題がありませんでした。

 

その後も同じような発表が相次いだのですが、中にはかなり悪質と見られるものもありました。

「奈良万葉若草の宿 三笠」というホテルの事例では「和牛ステーキ」と表示されていたメニューの肉がオーストリア産牛肉を使用した成形肉だったそうです。

これは、成形肉の製造に使われる食品添加物の結着剤がアレルギー物質として働く場合があり、生肉と思ってアレルギー体質の人が食べることがあれば事故につながります。

 

こういった食品表示を取り締まる法律として「景品表示法」というものがありますが、この名称はちょっと不思議に感じられるかもしれません。

実は正式な法律名は「不当景品類および不当表示防止法」で、略称の景品表示法で出てくることが多いようです。

これは昭和35年に起きた「にせ牛缶事件」を契機に作られた法律でした。

消費者が牛缶にハエが入っていたと衛生局に持ち込んだのですが、その中身がクジラ肉であることが分かったというものです。

これが大きな社会問題となったため、昭和37年に制定されたのが景品表示法でした。

 

他に食品などの表示に関わる法律としては、薬事法健康増進法食品衛生法JAS法、不当競争防止法、公正競争規約などがあります。

 

上記の事件があり、消費者の疑問も多くなったことに対し、事業者も対応に苦慮することとなり、景品表示法の具体的な解釈事例が求められたので、2013年にはメニュー表示ガイドラインも公表されました。

具体的な表示例を示し、どこが問題かといったことを解説しています。

多いのは原産地表示、魚介類の品種、農産物の有機表示と言ったものです。

 

それでも多くの事例でなんとか消費者にアピールしたいという事業者側の事情のために、「グレーゾーン表示」というものも頻発しています。

消費者の期待がどこにあるか、それを法律違反にならないギリギリのところまで書き込んでアピールできるか。

そのせめぎ合いはこれからも続くのでしょう。

 

なお、事業者側も多くのところでは真剣に取り組んでいますが、中にはその会社の体質としてなかなか進まないところもあるようです。

中には料理長が権限を持ちすぎ、社長はじめ誰も文句を言えずに昔の感覚でやり放題というところもあったようです。

そういった社内の雰囲気の是正から必要なところもあったようです。

 

食材偽装 メニュー表示のグレーゾーン

食材偽装 メニュー表示のグレーゾーン

  • 作者:森田 満樹
  • 発売日: 2014/09/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 真面目な取り組みもされているのでしょうが、まだまだ色々なところに問題表示が溢れているように見えます。

騙される消費者が居れば、騙す事業者も後を絶たないということなのでしょう。