爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「人類を変えた素晴らしき10の材料」マーク・ミーオドヴニク著

材料といえば何かを作るための元になる物質という意味で使われる言葉ですが、「材料科学」と言えば科学の一分野で様々な用途のために使われる物質、およびその新材料を作り出すという機能を持つものです。

 

著者のミーオドヴニクさんはその材料科学の研究者でロンドン大学の教授です。

人類の現在の繁栄はいわば「材料によって為された」とも言えるほどのものです。

そういった、人類文明が作り出しそして逆に文明を支えて来たとも言える10の材料について語っています。

なお、著者は大学教授の傍らBBC放送で番組のプレゼンターも務めるという方ですので、その語り口もなかなかこなれたものとなっています。

 

取り上げられている材料は、鋼鉄、紙、コンクリート、チョコレート、泡、プラスチック、ガラス、グラファイト、磁器、生体材料というもので、いずれも古い新しいの差はあるものの文明を支えていると言えるものばかりです。

 

それらの材料について、人々は色々な疑問を持っています。

「ガラスが透明なのはなぜ?」「スプーンには味がないわけ?」「カミソリの刃はどうして切れなくなるの?」「世界一軽いものはなに?」

こういった疑問にも答えながらその基本にある材料の科学を説明していきます。

 

 

コンクリートは現代の建築や土木を支えているものですが、古代ローマでも現代のものと多少違いはあるものの同じようなものが使われていました。

現代のコンクリートの原料は石灰岩を1450℃の高温で熱して作りますが、古代ローマではそのような操作はできませんでした。

しかし、自然の偶然で石灰岩地帯での火山活動で必要な熱量がかけられたセメント状の砂が利用できたそうです。

なお、コンクリートは圧縮されることには強いのですが、引っ張られると簡単に崩壊します。

その弱点を補ったのが19世紀になってからのことで、フランス人のモニエが鉄筋をコンクリートに埋め込むことで曲げられる応力にも耐えられる強度を身に着けたのでした。

 

現代は至る所にプラスチックが使われていますが、その始まりはごく最近になってからのことでした。

セルロイドが発明されいろいろな用途に使われだしたのが19世紀ですが、これがなければ映画のフィルムもできず、映画の文化も発展しませんでした。

しかしその開発には多くの人の努力と失敗が重ねられたようです。

 

これからも多くの材料が開発され、それによって人々の生活は変わっていくのでしょう。