日本は国債などの政府の借金が非常に多く危ないという話はありますが、それほど危険でもないという解説もあり、本当のところはどうなのか難しいのでしょう。
以前からそうであったのが、このコロナ禍でさらに激しくなったのかもしれません。
この本は、投資や国際金融などが専門という吉田さんが、2011年の時点での世界情勢、日本の将来の危険性を警告しているものです。
その当時は世界はリーマンショックの余波でまだ混乱している状況、日本は民主党政権下で円高が続き景気低迷が続く中で東日本大震災と福島原発事故が発生し将来への不安が増している時でした。
それではその後の安倍政権でこの時の不安要素は解消したのでしょうか。
処処の様相はかなり変化はしているのでしょうが、危険性はまったく消えたわけではなく、さらに増したようにも感じます。
その後もこの著者の吉田さんは何冊もの本を出版されていますので、現代の状況についてはそちらを読まなければならないでしょう。
しかし、とりあえずはこの本の内容を書き留めておきましょう。
2011年にかけての数年間は、アイルランド、ギリシア、ポルトガル、スペイン、イタリアの順で国債の価格が暴落するという、債務危機が発生しました。
EUが公的資金供給でなんとか抑え込みましたが、根本的な解決がされているわけではなく金融機関の抱え込んだ不良債権も実態が不明なままとなっています。
また、その頃にはアメリカをはじめとして量的緩和と称して市場が引き受けない国債を中央銀行に買わせるという行為が頻繁に行われるようになります。
これも非常に危険な結果が出る場合もあります。
しかし、その寸前まで当事者たちは「今回は違う」と思い込みたがり、好景気に浮かれます。
結局はいつもの通り崩壊や危機に見舞われすっからかんになるわけです。
2008年9月の世界的な金融危機に対して各国は大規模な公的資金介入を行いました。
本来ならばドルの大幅な増加でインフレとなっても不思議ではないのですが、日本と中国が米国債を大量購入することで支えたようです。
他にもデリバティブの原理やその使われ方など、あまりよく分からない点についても詳しく解説されています。
しかし、これは私が素人だから分からないというだけでなく、著者によれば財務省の担当者も何も分かっていないということですから、恐ろしい話です。
米ドルは基軸通貨とされてきた歴史が長いのですが、これもそろそろその地位が危うくなっているようです。
これまでのところ、この体制を守るために1、新興国・資源国のドル買い、2、サウジなどの大きな産油国のドル・ペッグ制、3、中国と日本のドル買い介入、が大きな働きをしてきました。
しかし今後はこういった動きが弱くなり、ドルの基軸通貨制は崩れていくということです。
大きく見れば経済の成長はやはり人口増に支えられているということです。
そのため、人口減が見込まれる日本ではもはや経済成長は起きません。
それを避けるには積極的な妊娠や育児に対する援助や制度改革が必要であり、フランスのようにそれを実施した国は人口増が実現し今後の成長も期待できるということです。
この点は、「経済成長」しか考えていない人特有の考え方でしょう。
他に「資源や食糧の供給」の問題があることを思えば、下手に人口増を起こすとかえって食糧危機の時に傷が大きくなります。
本書最後には、国家破産する場合の財産の守り方ということが説明されています。
忘れてはならないのは、「国家破産」といっても政府が破産するだけで、国民や社会が破産するわけではないということです。
ただし、「貨幣」は国家の負債ですのでこれだけを抱えていたら急激な価値の低下が避けられません。
やはり色々な形態の財産に分割して保有しておくことが必要です。
現金や預金はインフレで価値が下がる危険性がありますが、多くの国の外貨にして預金を持つことで危険性が分散されます。
また、金で保有するのも有効ですし、株式も会社が潰れなければ価値が残ります。
こういった手法でできるだけ危険性を分散しておく必要があるのでしょう。
本書の書かれた時点以降、安倍政権の政策で状況は変化はしていますが、やはり危機は近づきさらに大きくなる危険性が増えているように感じます。
少しだけの財産ですが、分散しておく必要があるのかも。