お客様からのクレームは貴重な企業運営のための資料とも言えますが、「クレーマー」となるとそうも言っていられません。
ある大手食品メーカーによれば、年間の消費者からの電話が2万件あったそうですが、そのうち80%は問い合わせ、ご意見というのが10%、苦情が10%です。
その苦情のうち、会社側に責任のあるものは数%のみでした。
ほとんどが、消費者側の勘違い、思い込み、誤解などから来るものです。
しかし、中にはクレームで何らかの金品をせしめようとする悪質クレーマー。
そして、会社側を困らせようとするだけが目的のクレーマーなど、心してかからなければ大変なことになる相手も出現します。
著者の援川さんは警察勤務のあと流通会社で渉外担当、そして悪質クレーム対応の会社を立ち上げたという方で、こういったクレーマーの対処について指導もしています。
金目当てのクレーマーはほとんどそれが稼業のような連中ですが、彼らの手口をしっかりと把握し、会社として統一した見解をもって対処しなければ付け入られます。
それが無くて現場の店長任せにしてしまい、追い詰められた店長さんがクレーマーを刺殺してしまったという事件も起きたことがあるそうです。
全社的なクレーム対応方針をしっかりと決め、それを社員全員に徹底して当たることが必要です。
具体的な対応としては、5つのポイントを提示しています。
1、経緯をしっかり録音・記録する、2、安易な約束やいい加減な言葉を口にしない、3、交渉には複数で、4、自宅電話や携帯電話の番号は絶対に教えない、5、交渉のスタンスはあくまでも対等・平等のつもりで。
まったくごもっともと言うことでしょう。
特に、家を訪問させる時に「近くまできたら電話して」と言って担当者の携帯番号を聞き出すという手口があり、それで分かった携帯に朝晩問わずに電話してくるということもあるそうです。
こういった金目当ての悪質クレーマー以外に、店との交渉がこじれて悪質化してしまうクレーマーも多いようです。
最初の企業側の対応がまずいということも多いようで、現場の担当者の細かい気づかいが必要になります。
ただし、こういった「グレーゾーン」のクレーマーも徐々に増加し、さらに「クロ」に近づいてしまうことも多いようです。
公務員であることを明らかにしながら、詐欺まがいのクレームで金品を要求したという事例もあったとか、油断はできません。
会社としても、担当者としてもきちんとした心構えと準備が必要なのでしょう。