爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「楽器学入門」守重信郎著

現代のオーケストラを見ていると、その起源も発達段階もまったく異なる楽器が一堂に会して一つの曲を作り上げていくということに感動を覚えます。

 

しかし、楽器それぞれを細かく見ていくと、現代の形にたどり着いたのがかなり前のものもあり、ごく最近のものもありと、千差万別です。

 

こういった楽器の歴史や発展を、武蔵野音大で楽器博物館の主任学芸員をされている守重さんが、歴史的な古楽器のものから現代の楽器まで豊富な写真を用いて説明されています。

 

本書の最初はピアノからです。

ピアノなどの鍵盤楽器は弦楽器であるとも言えます。

ただし、鍵盤と言うものの最初の形は古代ローマの水力オルガン「ヒュドラウリス」からだそうです。

何本もの弦を備えた弦楽器はありましたが、その発音に鍵盤を使おうとしたのは中世のヨーロッパで「ハーディ・ガーディ」と呼ばれる楽器が最初だったようです。

なお、この楽器も最初の形は東洋起源であり、イスラム教国からスペイン経由で入ってきたようです。

その後、クラヴィコードチェンバロと発展し、18世紀になってイタリアのクリストフォリ、ドイツ人のジルバーマンによって多くの機構が発明され現在の形になってきました。

 

ヴァイオリンのような弦楽器は、元の形は紀元前から見られますが、弓で弦を引くという弓奏もやはりアジアで生まれました。

9世紀の中央アジアで見られるそうですが、それが10世紀にはヨーロッパに入っています。

最初は竪琴を弓で弾くクルースやレベックという楽器だったのですが、それがフィドルと言う楽器になるとヴァイオリンにかなり近づいてきます。

そして、16世紀にはほぼ今の形のヴァイオリンになりました。

16世紀前半にはヴァイオリンは急速にヨーロッパに普及しました。

そのわずか後の1650年から1750年頃には現在でも名器として扱われるアマティ、ストラディヴァリ、グァルネリといった製作者たちがイタリアのクレモナで名器を作り上げました。

ただし、19世紀初頭にかけて音楽の形が大幅に変わり、音量の増大とピッチの上昇という問題が起き、上記の最大名器と言われる楽器もこの変更が施されています。

そのため、オールド・ヴァイオリンと言われるものもオリジナルではなくなりました。

オリジナルのままのものはバロック・ヴァイオリンと呼ばれ、現在では古楽器とされています。

 

管楽器には音を発する機構からしてまったく違うものを含み、気流のコントロールのみで発するフルートや尺八、薄片の振動を使うクラリネットオーボエ、唇の振動を使うトランペットやトロンボーンといった種類の違いがあります。

 

金管楽器は唇の振動を用いる「リップリード」という楽器群ですが、これも歴史はかなり古くいつからあるかもわかりません。

古代から戦争の時に使われる楽器として世界各地で発展してきました。

多くの管楽器は現在はバルブと言う機構で音を変えるようになっており、このバルブシステムの採用で音楽として使いやすくなりました。

この開発者はドイツのシュテルツェルで、1810年代に最初はホルンに応用しました。

 

トランペットにもバルブシステムが応用された現代型が誕生するのですが、それは19世紀も終わりに近づいたころのようです。

それ以前にはトロンボーンのようなスライド式のイングリッシュ・スライド・トランペットというものも使われていました。

 

トランペットに近い音を出す、コルネット、フリューゲルホルンというものがありますが、これも起源を訪ねるとかなり違うものだったようです。

コルネットは前身がイギリスのポストホルン、つまり郵便馬車の御者が使うホルンでした。

一方、フリューゲルホルンはドイツの狩猟用のホルンから軍楽隊に取り入れられたものだそうです。

 

他にも様々な楽器、古楽器が写真とともに示され、なかなか興味深いものでした。

 

楽器学入門  ―写真でわかる! 楽器の歴史―

楽器学入門 ―写真でわかる! 楽器の歴史―

  • 作者:守重 信郎
  • 発売日: 2015/09/29
  • メディア: 単行本