今年も気象災害が相次ぎ、台風や集中豪雨で多くの被害が出ています。
警報などが発表されても避難をしなかったり、遅れたりして被災する人も多いということから、避難情報の出し方も変えられたりと、いろいろな対策が行われています。
本書は、長く気象庁に勤務されていた著者が、災害と避難ということについて書かれています。
ただし、どうしても気象災害そのものについての記述や、観測・予測技術についてのことに文章の重きが置かれているようで、「避難」そのものについての現状分析や提言といったものはあまり書かれていないようです。
その意味では、最初の第2章「備えと避難の知恵」と第3章「避難の猶予時間」というあたりが、「避難」というものを論じた貴重な部分と言えるかもしれません。
その後の章は、そもそも気象災害とは何かといったことや、観測システムについて(この辺は著者の一番専門のところでしょう)といった知識の部分になるため、「災害」というものの全容を捉える役には立つでしょう。
「避難の猶予時間」というものは、考えておくべきことかもしれません。
実際に避難が必要かどうかということは、台風や集中豪雨の場合には予測が出されなければ分かりません。
その精度が上がるほど、避難すべき地域や対象者がはっきりしますが、それでもかなりの「空振り」は出てしまうでしょう。
それでも、少々の空振りは覚悟の上で避難を始めなければいけないのでしょう。
なお、竜巻の場合は発生予測は非常に困難であり、潜在的危険性は分かってもどこで発生するかということはほとんど起きてみなければ分からないようです。
避難のしようがないという場合もありそうです。
地震も発生予測は困難ということですので、事前の避難は不可能です。
しかし、地震による津波の発生は予測可能ですが、避難までの時間は場合によって差があるので、そこまで考えて避難を考える必要があります。
本書の範囲を越えますが、近頃の避難指示や避難勧告の多発もちょっと不感症になっていくかもしれません。
狼が出たという予測を出しすぎるのも危険なのかも。