この本は2000年から2001年にかけて、日本経済新聞社に連載された「エコノ探偵団」という企画のうちから40話を選んで2001年4月に出版されたものです。
2000年と言えばバブル崩壊からまだ10年足らず、バブルの後始末がようやくできた頃でしょうか。
もちろん、まだ復活の見込みもたたなかったというところでしょう。
そんな雰囲気の中、日経新聞を読むようなサラリーマンであっても、経済というものが分かっていないだろうと、いろいろな経済現象について具体的に説明しようとしたものであり、様々な現象が取り上げられています。
今から20年も前の話であり、低成長が続いているという点では同様なのですが、他の多くの点では現在とは違うように見えます。
このような本を改めて現在読む価値があるのかどうか。
経済の解説本はどうしても賞味期限があり古いものは陳腐に見える事が多いでしょう。
しかし、その当時には経済の専門家、日経新聞の記者たちも真剣に考えて様々な記事を書いていたはずであり、その背景が時とともに変化していったことで、その記事の内容がどう変わっているかを考えれば、何らかの知見が得られるのではないかとも思います。
単なる時間の無駄に終わるのかどうか、それは読み返してみるこちらの力量とともに、当時の環境に対して解析し記事を書いたその頃の日経新聞記者のレベルにも左右されるのかもしれません。
経済専門家以外のサラリーマンなどに読ませようという意図から、どこにでもあるような事象を取り上げ、その背後に潜む経済の原則を示すといった手法で多くの記事が書かれています。
例えば、「オープン価格がなぜ増えるのか」「地価が下がっても家賃が下がらないのはなぜか」「結婚式の謎、地味婚って本当?」「地価下落で大議論、デフレって本当?」「増え続けるフリーター、日本経済は大丈夫か」「なぜ若者はスキーに行かなくなったのか」「米社が日本国際格下げ、日本経済はどうなる」
こういった表題だけ見ても、20年たっても変わっていないというものもあり、すでに回答が得られたものもあり、今ではかなり状況が変わってしまったものもあるようです。
日本国債の格付けは、すでにこの当時から下げられていました。
しかし、今の所国債が崩壊するという兆候は見られず、相変わらず政府の国債頼りの予算編成には変わりはありません。
記事のなかでも、財政健全化という方向にあるとされていますが、結局は何もできないまま、さらに国債の発行は続けられています。
地味婚という言葉がすでにこの頃には出回っていたようです。
記事の中では、実際にはそれほど費用が少なくなっているわけではなく、使い方が変わってきたという分析になっています。
この点では、20年でかなりの変化があるかもしれません。
そもそも、結婚する(できる)人の割合が急激に減ってしまいました。
さらに、結婚はしても結婚式はまったくしないというカップルも増えています。
結婚および結婚式というものに対する意識は大きく変わったと言えそうです。
この当時は、まだ「本当にデフレなのか」ということが議論されている段階でした。
政府の判断でも、「デフレの懸念がある」といった口調で語られ、記事中ではそれは補正予算作成のための雰囲気作りに過ぎないと決めつけています。
デフレを過度に警戒している風潮というのが、時代の大きな差を感じさせます。
与党(当時は自民党)の公共工事政策の変化ということで、道路工事等を分割発注する問題について触れています。
細かく分割して発注すると、コストが割増となるのですが、それでもそうしたいのは小選挙区制への移行に理由があったとか。
以前と比べ、選挙区内の建設会社は小さいものが多くなり、そこに発注させるためには大きな公共工事ではやりにくく、細かく分けないとできないのだという観測です。
この点については鋭い。
今の経済を知るためにも昔のことを見てみるのは効果があるのかもしれません。
なるほど!不思議な日本経済―エコノ探偵団レポート・新世紀版 (日経ビジネス人文庫)
- 作者: 日本経済新聞社,日経=,日本経済新聞=
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2001/05
- メディア: 文庫
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