爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ビッグデータという独裁者 『便利』とひきかえに『自由』を奪う」マルク・デュガン、クリストフ・ラベ著

ビッグデータ」という言葉を最近よく聞きますが、日本の報道ではこれをビジネスチャンスにするといったニュアンスのものが多いようです。

しかし、世界の巨大IT企業はそれを思いのままに操り出しています。

すでにオーウェルの「1984」を越えています。

ITに接続していれば、非常に便利な生活を送ることができます。

しかし、その代償に普通に生きているつもりの人間の習慣や行動、消費や精神的・思想的特徴などが個人データとして自分の知らないところで作られています。

IT企業はそれを商売として売って巨額の利益を得ていますが、それは政府の諜報機関とも結びつき、彼らの「テロ対策」の名のもとに使われようとしています。

これまでもファシズム共産主義は個人の自由を奪い多くの人を破滅に追い込みましたが、それをはるかに効率的にやってのけることができるようになっています。

 

AGFA、アップル・グーグル・フェイスブック・アマゾンというデジタル業界の巨大企業はわずか10年で世界を征服してしまったかのようです。

アメリカはこれまでも世界経済を絶対優位に牛耳るために、まず石油産業と組みました。

その後、海外でクーデターを背景に立ち回り(パナマ等)、ゲリラを支援し(ニカラグア等)、軍事介入し(イラク等)、あらゆる面で利権を取り込んできましたが、今度はIT巨大企業と結びつき世界を支配しようとしています。

 

ビッグデータで動かされる社会には、民主主義は不要となります。

もしも、ビッグデータ企業がリアルタイムであらゆる社会政策に対する個人の反応を見ることができるようになったら、現在のように4,5年ごとに投票する意味はなくなります。

すでに、税金の面ではビッグデータ企業は国の支配を抜け出したようです。

彼らはほとんど税金を払っていないか、払ってもごく少額でしかありません。

 

今ではNSAアメリカ国家安全保障局)は、かつての旧東ドイツの秘密警察が多くのスパイを使って得た市民の情報をはるかに越える量の情報をつかんでいます。

自分が使っている携帯電話が、NSAのスパイであることを知ってか知らずか、便利に使っています。

このスパイの雇い主の名はアップルとグーグルです。

ネット上の支払いはすべて確認され、銀行口座は細かく分析され、行動も推測されます。

これらの情報集めは違法ではありません。

我々が携帯電話の契約にサインをすれば、「使用条件に同意」したことになっています。

 

ロンドンの街には30万台の監視カメラが設置されています。

すでに車のナンバープレートの読み込みはできるようになり、警察の捜査に使われていますが、今ではさらにある歩行者の顔を群衆の中から探し出すことすらできるようになりつつあります。

いずれは、大都会ではカメラに監視されずに歩くこともできなくなります。

 

インターネットにつながるモノというものが便利さを理由にどんどんと生活に入り込んでいます。

日常生活の中のどこにでもあるようなモノ、ライトや椅子、ゴミ箱、コーヒーメーカ、冷蔵庫などが情報を抜き取ります。

これに、クレジットカードや交通カードも加えれば、個人の行動はすべて握られることになります。

グーグルによると今後5年で電気計器の半分は接続されます。

家庭用電気製品もそれに続くでしょう。

それは便利で快適な生活を送らせてくれるかもしれませんが、実は彼らは私たちの生活をお金にしようとしているだけです。

このように、身の回りのモノを「つながるモノ」に変えたビッグデータ企業は、次には人間自身を「つながるモノ」にしたがるでしょう。

アメリカのあるベンチャー企業はすでに皮膚にマイクロチップを埋め込んで電子ロックの解除や買い物の支払いをできるようにしています。

さらに、肌に貼り付ければ体温や心拍数、白血球率や血圧をリアルタイムで管理するセンサーもできています。

それで体調を管理することは健康のためには良いかもしれませんが、そのデータは何に使われるのでしょうか。

 

個人のデータの分析を犯罪の捜査に使っていると、犯罪の予測もできそうな気がしてくるようです。

アメリカのNSA国家安全保障局)は対テロ対策を口実に、犯罪に「犯意罪」を導入しようとしています。

犯罪を犯そうと考えただけで有罪となるということです。

フランスでも対テロ法で「犯意罪」が導入されました。

すでに、テロ行為の意図が検出されただけで逮捕され起訴されるようになっています。

 

ジョージ・オーウェルの「1984」は恐ろしい未来を予言するものでした。

しかし、現実はすでにそれをはるかに越えるものになってしまいました。

中国の現状が全世界の明日の現状かもしれません。

 

ビッグデータという独裁者: 「便利」とひきかえに「自由」を奪う (単行本)

ビッグデータという独裁者: 「便利」とひきかえに「自由」を奪う (単行本)