株式会社ゲンロンとは、講座で講師の一人でもある東浩紀さんが代表を務める出版社で、そこで大森さんを主講師として開かれた「SF創作講座」の1年間にわたる講義のすべてを記録したというものです。
大森さんの他に毎回SF作家などを講師として迎え、題材を提示してそれをSF小説として書くということを実施し、優秀作を完成品にまで持っていこうというものです。
講師としては、東さんの他にも10名の方を毎回交代で招き、それぞれの視点からSFというものの考え方を解説しています。
最近の方?が多いのか講師の皆さんについてもあまり知らないのですが、かろうじて新井素子さんと山田正紀さんには名前に見覚えがありました。
各講座は、大森さんとその回の講師の人が対談をして、その回の主題について解説し、それに対して参加者はその解説に沿ったSF小説の大筋を考え、その場では梗概(あらすじ)を提出、それにさらに肉付けして完成品を目指すという手法で進めていきます。
たとえば、東さんとの講義では、「変な世界」を設定せよ。というお題を提示しています。
SFというものには多くのタイプが有りますが、SFをSFをとするために必要な要素が「センス・オブ・ワンダー」というものです。
つまり、「驚き」を与えるというものです。
この回の創作では、その「驚き」を舞台となる世界の設定に入れるというのが課題でした。
秀作となった、高木刑さんという受講者の作品は、17世紀のプラハを舞台とするものの、そこには謎の宇宙生物が大量に地表を覆っているという設定でした。
新井素子さんを迎えての講義では「読者をおもてなししてください」というお題です。
SFを書く場合に陥りやすい罠が、自分で考えたテーマや設定を追求するあまり、ひとりよがりになってしまうこと。
そのためにも、一般読者を想定して彼らを「おもてなし」するという心構えが必要になります。
秀作となった、櫻木みわさんの作品では、櫻木さんの海外生活体験を十分に入れ込んで読者を楽しませる(?)という「おもてなし」が取り入れられていました。
最後には、全講義を通して優れていた2作品の完成形が掲載されていました。
崎田和香子さんの「2本めのキュウリの謎」そして、高木刑さんの「コランポーの王は死んだ」というものです。
どちらも設定から文章の隅々に至るまで非常にレベルの高い作品と見えました。
中々面白い企画があるものです。