著者のバドルさんはエジプトの外交官であり、2003年から2007年の間は駐日大使でした。
この本は大使を退任し帰国した直後の2008年に書かれたものです。
2001年のニューヨークなどでの同時多発テロ以来、イスラム教徒をテロ集団と見なすような風潮が強まりました。
そのような誤解を日本人に持ってほしくないという強い希望から書かれた本です。
中東各国が日本に対して強い親近感と憧れを持っていると言われますが、その要因としてはやはり欧米諸国に対して非白人の国として早くから対抗し、さらにアラブ諸国に対して強い圧力を掛け続けていたロシアを日露戦争で破ったということが大きかったようです。
しかし、エジプトに対する日本の認識はいまだに低いものであることは著者は日本滞在中に強く感じていました。
遠い中東のピラミッドの国といった程度の印象しか持たず、エジプト人が日本に感じるような親近感とは大きな隔たりがあります。
さらに、日本人の持つ中東・アラブに対する印象は、おもにアメリカのメディア報道に強く影響されています。
それは時には大きな偏見を持たれて書かれていることも多いようです。
あくまでも自分のメガネで見てもらいたいと言っています。
中東問題の大きな原因はやはりイスラエルの存在であり、それを後援し続けるアメリカの問題です。
パレスチナ問題を解決することが不安定な中東を安定化させる一番の方法であり、それに対して日本の助けを求めています。
- 作者: ヒシャム・モハメッド・モスタファバドル,Hisham Mohamed Mostafa Badr
- 出版社/メーカー: たちばな出版
- 発売日: 2008/07
- メディア: 単行本
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10年ほど前の本ですが、ここに来てトランプのせいで状況は遥かに悪化しました。
日本の役割もほとんど期待できなくなったようです。
バドルさんの現在の気持ちはどうなんでしょうか。