「漢文で読む」とは、言うまでもなく漢字が連なっている中国の文章を、返り点や送り仮名をつけて日本語として読む「漢文訓読」のことです。
かなり古い時代から、中国の文章をそのようにして日本語に変えて読むということが行なわれ、中国語を話すことはできなくても漢文を通して筆談はできるという状況が続きました。
それは近代になっても学校教育にも取り入れられ、今でも高校ではその初歩を習います。
本書は、その初歩は聞いた覚えがある人々に、さらに深い漢文の読み方を解説し、その面白さを再確認してもらおうというものです。
題材も、皆が少しは聞いたことのある史記の伍子胥の話や項羽劉邦の争い、三国志の中でも関羽張飛の活躍の場面や、諸葛孔明を迎えるための劉備の三顧の礼など、興味を持つ人が多いような(少なくともこういう本を読もうという人には)話題を選んでいます。
項羽の最後を描いた、史記の四面楚歌の部分は、高校の漢文の授業で習ったような覚えもあります。
本書は最初は返り点もすべて付けられたものから始まり、徐々にそれらのない漢字だけの文章も読めるようにと工夫されたものになっています。
しかし、「漢文訓読」というものは中国語を読む場合とはまったく関係ないにもかかわらず、日本語そのもののリズムとも違う独特の雰囲気を醸し出すものです。
それが、日本語を大きく変えてしまい現在のような形にしたとも言えるものです。
後に色々な本を読み、中国でも実際はこのまま読むわけではなく、口語とは別のものとして文章が発達したということを知りましたが、多くの日本の文人がこういった文章を読んでいったという歴史の重みを感じます。