爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

プラスチックのゴミ対策が叫ばれる中で、バイオプラスチックも注目される

海洋などのプラスチック汚染のひどさが改めて注目され、その対策としてストローの使用禁止、レジ袋の削減など(どちらもセコい対策!)が言われていますが、そこで注目されるのが「バイオプラスチック」と呼ばれる、植物を原料とするプラスチックです。

 

http://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-02/y031202-5r.pdf

 

プラスチックと言うものにはどのようなものが含まれるのか、上記の文書の中に次のような図が示されています。

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この図を見て興味深いのは「バイオプラスチック」として示されているのに、「ポリエチレン」や「ポリプロピレン」など、普通は「バイオプラスチック」とは意識されない化石燃料由来のもの、こちらを普通は「プラスチック」と考えているものも含まれていることです。

 

つまり、「バイオプラスチック」には石油等由来のプラスチックも含まれる、換言すれば両者に本質的な違いはないということです。

 

問題は「生分解性」があるかどうかであり、上図のなかでも化石由来プラスチックにも生分解性のものもあり、バイオマス由来(こちらを普通は”バイオプラスチック”と考える)の中にも非生分解性のものがあるのは注目すべきことでしょう。

 

とはいえ、まあ現在よく話題になる「バイオプラスチック」は「バイオマス由来」であり「生分解性」でしょうから、上図で言えばポリ乳酸やPHA系というものがそれに当たるのでしょう。

 

現状でもそれらを大量生産する技術はあるようですが、コスト的にはまったく通常プラスチックの敵ではないようです。

政策的に通常プラスチックを制限し、いわゆるバイオプラスチックを普及させるには、通常プラスチックの使用禁止や重税賦課といったことと、バイオプラスチック製造への補助金政策が考えられます。

 

それを進めて、生分解性プラスチックだけが流通し使用されるようになればプラスチックごみ問題は解決するでしょうか。

 

それはまず、不可能でしょう。

これまでに環境に放出された非生分解性プラスチックの総量はとてつもないもので、今から放出するゴミを生分解性にしたところで無くなるわけではありません。

それとともに、バイオプラスチックだけを使うと言うことは、その原料供給の問題から不可能でしょう。

現状ではバイオプラスチック製造の原料は糖分が主でしょうが、これは食糧と競合するのでそれほど使うわけには行きません。

非可食部の、例えばトウモロコシの茎葉、雑草等が使えるようになれば食糧競合は避けられますが、その供給が間に合うのかどうか。

現在のプラスチック需要がどの程度のものかを考えなければなりません。

 

現在の需要のごく一部をバイオマス原料のものに切り替えるといった「看板だけの事業」であるなら良いのですが、すべての需要をバイオマス原料に代えるとしたらどの程度の植物が必要か、とんでもないことになるでしょう。

 

このように「環境に良さそう」で進める事業もそのすべてがそれに代わったらと考えれば、それが可能かどうかはわかります。

すべての自動車を「電動自動車」にするということも、電池原料を考えれば難しいでしょう。

すべてではなく、徐々に代えれば良いと言う意見もあるでしょうが、いずれは完全代替になると考えればその方向自体が成り立つかどうかも明らかと思います。