爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「洗脳の世界」キャスリーン・テイラー著

「洗脳」と言う言葉が生まれたのは、朝鮮戦争の時でした。

もちろん、同様の事例はそれ以前にもいくらでも存在したのでしょうが。

 

国連軍の主力として参戦したアメリカ軍の兵士の中には戦闘中に捕虜になり、その後捕虜交換等で帰国した時にはまるで根っからの共産主義者のように毛沢東を賛美しアメリカを批判するという者が見られました。

 

このような事態がなぜ起きたのか、それを調べていく内に中国軍の捕虜収容所で「洗脳」ということが行われているということが分かりました。

英語で「Brain washing」と言いますが、これは中国語の「洗脳」の直訳でした。

 

中国軍では捕虜に対して拷問とともに教育や思想改造などを効率的に組み合わせ、彼らの望むように捕虜のアメリカ人の思考を変化させるということが行われていました。

 

洗脳、あるいはマインドコントロールと言うことが問題となるのは、その後も数多くの事件とともに明らかになりました。

カルト宗教の場合もそういった事例が頻発しています。

 

チャールズ・マンソンが立ち上げたカルト集団は富豪の娘のパトリシア・ハーストを誘拐しましたが、その数ヶ月後にはパトリシアはマンソンの信者たちと一緒にシャロン・テートなどを襲い殺害するという事件を起こしました。

パトリシアが洗脳されていたと裁判の弁護士は主張しましたが、それは認められませんでした。

 

ジョージ・オーウェルSF小説、「1984年」はこのような洗脳が社会の隅々まで行き渡っているという状況を描き表していました。そのような社会がいつかは来る可能性があるということを読者もみな共有できました。

 

本書著者のテイラーは脳科学者ですので、そういった洗脳の事例の紹介だけでなく、脳の機能や神経科学の概要まで詳細に説明しています。

ただし、その部分はやや一般読者には難解かもしれません。

 

洗脳と言うことが無くても、人間の心理や意識は徐々に変わっていくもののようです。

それをうまく利用して都合の良いように変えてしまうと言うことができるのでしょう。

洗脳というと、共産主義政権や独裁者がやりそうなことというイメージもありますが、そればかりではないようです。

 

洗脳の世界―だまされないためにマインドコントロールを科学する

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