私らの年代のものには懐かしい、LPレコードですが、実はLPの歴史というものはわずか30年に過ぎなかったそうです。
SPからLPとなってレコード文化が一気に広まりましたが、やがてCD化が恐ろしい勢いで進み、あっというまに事実上LPレコードは終了してしまいました。
しかし、その30年の歴史の中にもさまざまな変化が次々と起きていたために、LPといってもその中身は千差万別、いろいろな問題を含んでいるそうです。
著者の山口さんは、本職はデザイナーということですが、若い頃から音楽に親しみ多くのレコードを聞いてこられたそうです。
そのジャンルもクラシックからジャズまで、しかもその聞き方も非常に深いものであり、わずかな違いにも気がついてしまいます。
レコードの録音も、ごく初期にはダイレクトカッティングといって音楽を直接レコード盤に刻み込むと言う方式が取られてのですが、すぐにテープレコーダの発達で直接の録音はマスターテープに録り、そこからレコードにカッティングするという方式に移行しました。
その技術のおかげで、多重録音などといった録音方式も発達しましたが、一方では実際に皆で一緒に演奏ということは、クラシックのオーケストラやジャズセッションなどに限られ、ほとんどの録音では演奏者がバラバラに演奏すると言うスタイルになってしまいました。
また、テープからレコードへのカッティングと言う工程ではその担当者がかなり音質を左右できるということになり、演奏者の意図以上にカッティング技術者の意向が最終製品のレコードに現れると言うことになってしまいました。
そのため、レコード会社によって傾向が違ってくるということにもなりました。
レコードの材質は、比較的硬い塩化ビニール類と、比較的柔らかい酢酸ビニールの共重合体に、少量のカーボンブラックや滑り剤、帯電防止剤などの添加物を加えて作られます。
それも時代により変化してきたそうで、モノーラル盤の初期などは厚さ、重さも異なります。その割合により音にも影響が出ていました。
レコードによっては「再生が難しい」ものも多かったようです。
これはレコードのカッティングがおかしかったわけではなく、再生装置の調整を合わせるのが難しいという意味だそうです。
レコードというものがあまりにも奥深い世界であったということに、今更ながら初めて気が付きました。
それにしても、このような微妙な音の違いが聴き分けられるというのはすごいものだと感心します。
私など、多少の違いがあってもほとんど分からなかったということでしょう。
しかし、それでも楽しめた自分で良かった。(この著者ほど細かいことが気になっていたら、なかなか音楽を楽しむことができなかったでしょう)