爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「地球の履歴書」大河内直彦著

大河内さんの本は以前にも読んだことがあり、地球科学の分野以外にもエネルギー資源等の議論も肯ける論旨と感じました。

sohujojo.hatenablog.com

この本は統一したテーマというわけではなく、地球科学に関する様々な文を集めたというもののようです。

 

第2章で語られているのは、海底の地形についてのことですが、これが地球科学全体の見方にも影響を与えました。

海底がどのようになっているかということは、意外に新しい時代まで不明であったようですが、その探査の歴史もやはり戦争が絡んだ話です。

ソナーを用いた海底調査というものができるようになったのもその頃ですが、それでようやく海底にも巨大な海山があることが分かるようになりました。

ギヨーと名づけられたものは、かなりの高さがあるものの頂上が平らになっている盆状のものです。そして、それはほとんど西太平洋の深海に集中しており、さらに白亜紀にできたものであることが分かってきます。

サンゴ礁に由来する石灰岩は元々は浅い海にできたはずです。それが深海に沈み込んでいるということから、プレートテクトニクスにつながりました。

 

そのような石灰岩が大量に作られたのが白亜紀と言う時代でしたが、そこではそれと同時に石油の元となるヘドロのような有機物も大量に作られていました。それが石灰岩の蓋をかぶせられることによって熟成し石油になりました。

しかし、同時に1億2000万年前という時期には地球史上でもまれに見る大規模な火山活動が起きた時代でもあったようです。

通常はマントルはゆっくりと対流し地表からの熱エネルギー放射を引き起こしているのですが、それだけでは地中の深い部分の熱が徐々に上がってきてしまい、あるところで限界を越えて急激に膨張して地表に湧き上がってきました。

この時期に出来上がった火山性台地は、アメリカのコロンビア川流域やシベリア・トラップデカン高原のデカン・トラップなど大規模なものが世界中に広がっているということです。

 

海の水は地表の温度によって膨張したり収縮したりを繰り返してきました。

今からわずか2万年前、古代文明縄文時代の直前の頃には最後の氷河期でカナダやヨーロッパも厚い氷河に覆われていました。

実はその前の今から10万年前には現在と同じような温暖気候であり、海岸線も現在に近いものでした。

それが氷河期までに130mも海面が下がったことになります。

 

津軽海峡も陸続き、対馬海峡もわずか2kmほどの水路にまで狭まってしまいました。

このため、現在対馬海流と呼んでいる暖流は日本海に流れ込むことがなく、日本海の海水温も低下しました。

現在の気候で冬に大量の積雪を日本列島にもたらしているのは、日本海に温かい海流が入り込み大量の水蒸気を供給しているからです。したがって、氷期にはほとんど日本には雪は降らなかったようです。

 

それが温暖化に伴い海面が上昇していきました。それは今から14500年前のことです。

海面上昇のスピードは1年に5cm以上になりました。現代の急激な海面上昇といっているスピードのさらに20倍の速さでした。

実は、この現象は世界中で同時に起きていました。

すでに文明化の玄関に入り込んでいた人類には記憶を残す方法を持っている者もいました。

彼らが覚えていた、このような海面上昇が「ノアの洪水」のような洪水伝説として世界各地に残っているのではないかということです。

これは、場所によっては「ムー大陸」や「アトランティス大陸」の伝説となっている場合もあるのかもしれません。

 

あとがきには、著者は「いつの時代にも人類社会は近々破綻すると主張する論客はいたが、科学や技術の成長により回避された。今後も技術革新で乗り切れる」と論じています。

これは少々甘いのではと感じます。これまでも「エネルギー供給の縮小」ということは解決されていません。これがこれからの焦点ではないでしょうか。

 

まあ、この誤解をしている中には科学者でもほとんどの人が含まれますので仕方のないことですが。

 

地球の履歴書 (新潮選書)

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