NHKの「欲望の資本主義」という番組の取材として、ノーベル賞受賞者のコロンビア大学教授のジョセフ・スティグリッツ、チェコ出身の異色の経済思想家であるトーマス・セドラチェク、元ゴールドマン・サックス社員の投資家スコット・スタンフォードを迎えて、大阪大学の経済学者安田洋祐氏が対談した内容をまとめた本です。
終章にはセドラチェク氏が三菱ケミカル会長の小林喜光氏と対談した内容も収めています。
スティグリッツは「見えざる手はない」として「アダム・スミスの間違い」を語ったことで有名ですが、現在の資本主義の暴走は短期主義の金融市場によるものとしていても、新たな科学の進歩でこれまでと違った資本主義が生まれ、成長が維持できるとしています。
セドラチェクは共産主義時代のチェコスロバキアに生まれ、共産主義崩壊の直後に23歳でチェコ共和国大統領の経済顧問に招聘されるという経験をしています。
成長を必須とする、成長資本主義は誤りであると明白に言っています。
成長のためならば低金利政策や大量の国債発行も可というのが全ての先進国の考え方ですが、これが問題であるとしています。
セドラチェクは成長に反対しているわけではないと言っています。成長そのものが悪いのではなく、成長が最優先と考えるのは間違いということです。
経済が成長しないのは、もうこれ以上成長する必要がないからだとしています。
あまり好況が過ぎるのはおかしい、これにブレーキをかけなければいけないということを考えなければいけないのです。
成長しなければならないという脅迫観から、日本では国債と言う未来からのカネを注ぎ込んでいます。
良い投資であれば借金をしても大丈夫という議論もありますが、借金や必ず返済しなければなりません。
2008年の金融危機は大きなものでしたが、この時もしも「債務がゼロだったら」危機の影響はほとんどなかったはずです。
政府が銀行からGDPの3%の借金をして、それを財源に公共投資をし、それでGDPの1%の成長が達成されれば政府は大喜びをするはずです。しかし、それは間違いです。
借金で買った成長に意味はありません。
セドラチェクという人、なかなか見るべき事を言う人だと発見しました。