本書あとがきにある、この本を書くようになったきっかけというのが、西部劇映画「黄色いリボン」の冒頭に、第7騎兵隊全滅の報せを各地に伝えたという場面があり、「これは史実だろうか」と感じていろいろと調べだし(著者は歴史学者です)、そうこうしている間に他の歴史映画のDVDも見るようになって、すっかりハマってしまったということです。
それにしても、神話の時代から第2次大戦までの歴史を舞台とした映画は数知れないほどありますが、この本にも数百本のものが紹介されており、そのすべてをご覧になったそうです。
それだけやれば本を書いても不思議ではないか。
しかもその紹介文が、歴史学者らしく歴史の史実だけを書いていくと言うものにとどまらず、出演俳優やサウンドトラック音楽についても滔々と語っているという、本当に映画好きが書いているような文章になっています。
ただし、惜しむらくはあまりにもその対象となる映画が多すぎて一つ一つの紹介は長くて2ページ、短ければ数行というもので、どれか一つに思い入れがあるという人には物足らないものかもしれません。
なお、本書に取り上げた映画の基準としては、DVD化されて手元に持っているもの(すべてご購入されたそうです)であり、入手できなかったものは紹介していません。
また、日本のものは含まれていません。
それでは、実際にどのように描かれているか例を挙げてみましょう。
ローマとその支配地を舞台とした映画は次のものがある。史実とどの程度一致するか疑わしい。 と、歴史学者らしく書き始めています。
戦車競走で圧倒的な迫力で有名なのは「ベン・ハー」(1959年アメリカ、原題Ben-Hur) 212分の上映時間が短く感じる。アカデミー賞11部門を独占受賞したのもうなずける。
原作はルー・ウォレスのベストセラー小説だった。
簡潔ですが、必要項目は漏らさず記述されています。
(1043?ー99、本名ロドリゴ・ディアス・デ・ビパール)はスペインの国土回復運動(レコンキスタ)の英雄。
映画「エル・シド」(1961年アメリカ、原題ElCid)はこの英雄エル・シドをえがいたものである。「エル・シド」(あるいはエル・ジッド)は主君、指揮官、司令官の意味である。
(この後、歴史的背景の説明)
映画ではエル・シドをチャールトン・ヘストンがさっそうと演じている
シメンをソフィア・ローレンが演じている。ソフィア・ローレンの大きな眼は圧倒的な迫力で迫ってくる。存在感はヘストンよりローレンのほうがあるといっていい。
個人的な感想ながら、実際に見たという感覚がきちんと記されています。
なかなかおもしろい内容のものでした。