読んでいる途中であまりのつまらなさに途中で止めた本というものもありますが、この本の場合はつまらない、面白くないというのではなく、あまりにも書かれていることに腹立たしさを覚えて途中で読む気がなくなりました。
それは、アメリカからの無理強いで高価なミサイル防衛システムを買わされ、それが日本の防衛全体を揺るがしているという記述以降です。
しかもそのPAC3というものは湾岸戦争で使われてたといってもその効果が不明確な欠陥商品かもしれないとか。
この本は2009年出版、書かれていることは小泉政権時代のことが主ですが、それでもこの体たらくです。今ではさらにひどいものでしょう。
著者の半田さんは中日新聞や東京新聞で主に防衛について書かれてきた方です。
昨今の政権応援団のメディアではない、真に政権を批判的に捉えて書ける方でしょう。
自衛隊の海外活動は、1991年の掃海艇のペルシャ湾派遣で始まり、翌92年のPKO協力法成立以降常態化してしまいました。
東ティモールなど5回の派遣で自信をつけたのか、2001年にはテロ特措法を制定した上でアメリカ支援のためにインド洋に海上自衛隊艦船を派遣しました。
さらに2004年にはイラク特措法を根拠に、「戦地」イラクに陸上自衛隊が派遣されました。
そこでは航空自衛隊の輸送機による「人道復興支援活動」としての輸送も行われましたが、その実態はアメリカ軍将兵の輸送がほとんどであったようです。
本書はそのアメリカのために戦地に送り込んだ自衛隊の実情を取材し記録としたものです。
「湾岸戦争のトラウマ」ということが言われます。
湾岸戦争の際には日本は130億ドルにおよぶ巨額の拠出をしまいしたが、部隊派遣は行わなかったためにほとんど諸外国から認識されず、感謝もされなかったというものです。
1991年に湾岸戦争終結後、クウェート政府が米国など30国に謝意を表す広告をアメリカで新聞に載せましたが、その中に日本の名が入っていなかったことも象徴的です。
しかし、実状はこの130億ドルはほとんどがアメリカに入ってしまっていた。したがって、クウェートはまったく知らなかったということのようです。
結局、アメリカだけのために戦費として貢いだだけのものだったのです。
イラク戦争の後、陸上自衛隊がイラク南部のサマワに派遣されました。
しかし、そこでの活動はほとんど実態がなく、戦闘を怖れて基地の中にずっと籠もっていたのが実態のようです。
現地からはいろいろな要望があったものの、それは自衛隊ができるようなことではなく、活動自体まったく不可能でした。それも調べずに闇雲に送り出したのは、結局はアメリカに協力しているというポーズだけのものだったからです。
ミサイル防衛システムの話は、冒頭にも記したように読めば読むほど腹が立つばかりです。
アメリカが開発したものの高額なためにどこも購入しなかったこのシステムを唯一導入したのが小泉政権でした。
これをたとえたのが次の文章です。
「オートバイ用の駐車場しかないのに、アメリカ製のスポーツカーを買いたい。駐車場を広げるには母屋も立て直さなければならない。金もそんなにないけどしかたがない」
これとそっくりの事態になってしまったそうです。
2004年から導入したミサイル防衛システムMDのせいで、日本が定めた防衛計画大綱も予算面からがたがたになってしまいました。
それで導入を決めたパトリオットミサイルもその実効性が疑われる程度のものです。
湾岸戦争で初めてパトリオットPAC3が使用されましたが、それで撃墜できたイラクのミサイルはわずか9%だったという話もあります。
さらに、PAC3の射程距離は15kmしかありません。それを置いたごく近くのところしか守れないということです。
さらに米軍再編に必要な費用も多くを日本が負担するということになっています。
これらのツケはすべて国民に跳ね返ってくることになります。
ここにも「無関心のツケ」が回ってくるということでしょう。
この本の書かれた時には、安倍の辞任で一旦は危機が遠のいたとなっていますが、再登場以来さらに状況は悪化したということでしょう。