こういった「裏読み」とか「陰謀」というのが大好きなんですね。
ついつい惹かれて読んでしまいます。
そしてその内容が決して荒唐無稽で的外れとは言えないと感じてしまいます。
著者の朝倉さんは経済アナリスト、著書も多数ありご活躍のようです。
この本はその2010年出版のものですが、日本はデフレ真っ只中、ヨーロッパではギリシア危機になったところで明るい見通しなど持てなかった時期です。
その後、日本ではアベノミクスのマヤカシで回復基調のように見せられていますが、本書の中にそのカラクリとも言えるものが記述されています。それはあとで。
アベノミクスで黒田日銀総裁が前例ない金融緩和というのをやりましたが、その前にもゼロ金利体制で大規模な資金供給がされていました。
これが本書に書かれている「円キャリートレード」です。
2001年から日銀は金利ゼロで資金を供給し続けました。
これは投資資金を狙っていた世界中の投資家にとって思わぬ恩恵になりました。
この資金を使って世界中に投資先を求めたそうです。
そして、ちょうどこの時からアメリカもゼロ金利とし、ドル・キャリー・トレードがスタートしてしまいました。
この結果、アメリカの大手金融機関はほとんどが投資で利益を上げるということになり、企業や個人への貸付などは忘れ去られてしまいました。
このような投資資金が行き先を求めてさまよっているところに出てきたのがギリシアの国債の高騰でした。
実はギリシア国債は信用度が低く、そのために金利が高くなっていたのですが、その利ざやを取ろうとして各国金融機関がギリシア国債投資に走りました。
その中で問題なのはギリシアの金融機関自体もそれに集中したのです。
その結果、ギリシア国債の価格暴落となり、投資した金融機関が軒並み危機に陥ったのでした。
このような状況は日本でも起きています。金利差が少しでもあればそこに潤沢に供給される資金を投資してしまいます。
銀行も本来の貸出業務などは放っておいて投資ばかりです。
金融引締めがいつ行われるかという「出口戦略」が重要になってくるのですが、もし世界的なインフレが起きた時点で金利引き上げを行うと一気に国債大暴落につながるかもしれません。
株式市場の相場の動きも、かつては「仕手筋」と呼ばれる投資家により左右されていました。
現在で厳しく制限されている株価操作ですが、これが堂々と行われていたのです。
しかし、現在でも分からないような方法で操作されているのが株式市場です。
ロボットトレーディングという、コンピュータ駆使の株売買もその株価操作に使われているようです。
本書巻末には株価を操作しようという人々の動きを戯画化して書いています。
これは決して実在する話ではないとしていますが、どうでしょうか。
そこに書かれている一つの挿話が怖ろしいほど現状を映しています。
株価上昇を目指している政府首脳の会話です。
日本株式の価格形成には外国投資家の意志が強く反映しますが、そこと日本政府が申し合わせればどうなるか。
日本政府が年金基金を株式購入にあて、しかも当分売らないと確約すれば外国投資家も追随するという密約です。
そうなれば当分の間は株価が上がり続けます。
そしてその最後には外国投資家が売り抜けて利益を手にし、日本の年金基金は損失を出すということになります。
ここで書かれていることはあくまでもフィクションですと断っていますが、実際に年金基金の株式運用で多額の損失が出たということはつい最近のニュースにありました。
実際にあったことかもしれません。
こういう事例があるので、このような「裏読み」本は止められませんな。