昭和と言っても初年から最後までは長い年月があり、とても一口では言えませんが、まあ今の人たちが感じる昭和というのは高度成長期までの感覚でしょうか。
その頃には確かに存在し、多くの人たちが従事していたけれどいつの間にか見なくなって、今はまったく消えてしまったという仕事がたくさんあります。
この本はそういった仕事について、簡単な解説とデータを示し、さらにイラストでその仕事風景を描き出すということで、昭和の半分以上を生きてきた者にとっては前半生の記憶に残るものを思い出させてくれます。
なお、文を書かれている澤宮さんの略歴を見るとなんと熊本県八代市出身、私の現住所の場所です。大学から上京しスポーツライターなどを経てノンフィクションライターとなっているようです。
昭和の風景と言っても戦前だけのものはさすがに私にはよく分かりません。
例えば、人力車、木炭バス、演歌師、天皇陛下の写真売り、ミルクホール、公娼、のぞきからくり、羅宇屋といったところでしょうか。
戦後まで残っていたものは幼いころに見た記憶があります。
例えば、赤帽、押し屋(これはかなり後まであったのでは)、バスガール(いつの間にかいなくなりました)、行商、富山の薬売り(母の実家には来てました)、豆腐売(つい最近まであったような)、ロバのパン(これも自動車ではなく本当のロバの馬車を見たような気が)、チンドン屋、傷痍軍人、屑屋、エンヤコラ
わずかながらも現在でも続けられている仕事もあるそうです。
貧しかった時代で、捨てるものでも拾っていって再利用するという人たちが多かったようです。
ゴミ捨てでも今のように市町村に放り投げるような形ではなく、屑屋に渡すのですが、それも再利用できるようなものはすべて分別して利用するという形で、本当に捨てるものはわずかだったとか。
さらに、屑屋をできる鑑札を持っていない人たちは道を歩いて落ちているものを拾って生計を立てたとか。鉄、ガラスくず、糸くず、みかんの皮、包帯のくずまで皆再利用されていたそうです。
平野さんのイラストも優しい描き方でかつて見た通りのように思わせてくれました。