著者は1981年から93年までコカコーラ社の社長であったドナルド・キーオ氏です。
大企業元経営者の成功体験など聞きたくもないよというのが普通でしょうから、一捻りして「失敗する人の法則」という形で本にしたという作りですが、やはりそこかしこにその臭いが漂っています。
ただし、その期間のコカ・コーラ社にも「ニューコーク」の大失敗やワイン事業への進出といった失敗体験もあったということで、それにも率直に触れているのはまあ良い方でしょう。
今は昔になってしまいましたが、ニュー・コークという新製品発売のドタバタはなんとなく記憶にあります。今までの味をまったく変えてしまうという冒険的なものでしたが、顧客の大反発を受けて結局元に戻しました。その過程は綿密なマーケットリサーチを重ねたはずが顧客の意識を完全に読み違えたというものだったようです。
本書で失敗する人の法則として挙げてあるのは以下のものです。
リスクを取るのを止める
柔軟性をなくす
部下を遠ざける
自分は無謬だと考える
反則スレスレのところで戦う
考えるのに時間を使わない
専門家と外部コンサルタントを全面的に信頼する
官僚組織を愛する
一貫性のないメッセージを送る
将来を恐れる
仕事への熱意、人生への熱意を失う
その中でも著者が特に重要だと考えているのは「リスクをとらない」ことであるようです。
また、それに関連して「将来を恐れる」というのも重要視しているようです。
この辺はいかにもアメリカの成功者特有の反応かも知れません。
リスクを取るということは成功への第一歩かもしれませんが、リスクをかぶって大失敗という失敗者も成功者の数倍は(もしかしたら数十倍とか数百倍)居るはずですので、失敗への第一歩でもあります。
将来を恐れずに着手せよというのが成功への道ということですが、これもアメリカの繁栄という時代特有のものであったようです。
これからの時代は将来を恐れずにはいられないでしょう。それだけ幸運な時代で幸運な人生を送った著者の言葉であり、そこから今の時代に有益なものを引き出そうとしても不可能かもしれません。