爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「音楽の記憶 ポップ・ミュージックと本の青春」杉原志啓著

著者は1951年生まれですので私とほぼ同年代ですがわずかに年長です。
政治学者ということですが、どうやら音楽評論の方が本業になっているようです。

山形の豆腐屋さんの出身だそうですが、結構大きな商売だったようで少々余裕もあったのか、お祖母さんやお母さんが音楽好きで幼い頃から周りで色々な音楽が聞こえる環境で過ごしたようです。そのためか、ちょうど海外のロックなどが流れ込んでくる時期ということもあり、そちらに夢中になる青春時代を過ごしたようですが、その経緯を年毎にたどり、自らの成長もからめて年代記のように綴られたものです。
ほんの数年の差ですが、同様に親が音楽好きという関係から幼少時からさまざまな音楽に触れてきた私とは若干経過が異なることもあるようです。特にビートルズの来日時の興奮というものが全く記憶にない私と、重大な影響を受けた著者の差というものは大きな時間差になっていたのかも知れません。

著者の母上は祖父母の始めた豆腐業の一人娘でありながら、戦前には中国に渡りOLをやったという方です。そのためか、音楽の趣味も大正生まれでありながら結構洋楽好みということで、家業を継ぎながらもケセラセラやジャニーギターといったレコードを掛けるということがあったとか。また、豆腐屋の息子と馬鹿にされることのないようにか、著者にも幼い頃からバイオリンを習わせるということもしたそうです。

その後、中学入学の頃からロックミュージックというものに目覚め、とはいえ当時の東北地方の町の状況ではわずかにたまのラジオ番組で聞く程度だったようです。これはそれよりすこし遅れて東京近郊の中学に入った私でも同様で、テレビではほとんど歌謡曲番組ばかりでポップスはラジオで聞くしかありませんでした。雑誌なども専門誌が出だしたのはその後のはずです。

1964年のピートルズ来日は大きなものだったようです。この辺りが私との一番の違いで、まだ小学生だった自分にはほとんど意味が判りませんでした。中学生だった著者にはどういう影響があったのかは想像はできますが。

その後は大学進学のために東京に出て、(スムーズに卒業とは行かなかったようですが)どっぷりと音楽にも浸かっていくという生活になっていくようです。
私の場合はその後ロックというよりはジャズや和製のニューミュージックに流れて行きますので、進路は相当違いが出てきたのかも知れません。
青春のわずか一時期だけですが、共通した時代の経験を思い出させてくれた本でした。