四字熟語というと簡潔な中にさまざまな機微が詰められているようなもので、なかなか奥が深いものだと思います。
岩波書店では「岩波四字熟語辞典」という辞典も出版されたそうですが、その編集部がそれに収め切れなかった四方山話を本にまとめたと言う(それで二度美味しい?)本です。
四字熟語といってもその由来は様々で、漢籍(中国の古典)から取られたもの、仏典に由来するもの、日本で作られたもの(現代になってできたものもあります。)など色々あります。
弱肉強食ならぬ焼肉定食も四字熟語と言えば言えるようなものですが、古いものは漢時代以前ということですから2000年以上のものもあるわけです。
この本に収められたものの中には私も知らなかったものもありました。
またよく間違って覚えているものもあるようで、厚顔無知(恥)、興味深深(津々)、不和雷同(付和)、意味慎重(深長)などなど、気をつけねば。
今ではもともとの意味とは違う意味で通用しているものも多いようで、小心翼翼というと周囲を気にしてびくびくしているというイメージですが、この出典は詩経の中に、「これこの文王小心翼翼たり」とあり周の文王が慎み深く細かいことにも気を配ることができたことを称えた用語だったそうです。どこから意味が落下してしまったんでしょうか。
風樹之嘆(ふうじゅのたん)というのは知りませんでした。「親孝行したい時には親はなし」ということを表す言葉だそうです。しかし、本書にもあるように現代では介護する子供のほうも十分に老人と言えるほどということが普通になり、言っては悪いが「親孝行したくなくとも親はあり」という状況だとか。
他山之石とは、他のよい行いをお手本とするという意味はなかったそうで、元々は他の粗悪な石でも少しは役に立つというところから、たいした物でなくとも役立てるという意味だったそうですが、今では良い意味にも使われるそうです。これが辞典出版部で困るのは、広辞苑の編者の新村出がその序文の中で「名著を他山之石として」と堂々と誤用していたということがあったそうです。これは面白い話でした。
まあこういった本を読んでいろいろ薀蓄を増やしたとしてもちょっと使いようがないかもしれません。