爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

夢の話 「酵素実験をやっているところ」 ついでに酵素というものについて

今朝見た夢のメインは旅行に関するもので、”電車の駅”、”土産物店”、”トイレ”という旅行の三大要素(どこへ行ったかと言うよりも大問題)が気になって出てきましたが、夢の通例でいきなり場面展開して酵素実験をしているところになってしまいました。

 

実験内容はごく簡単なもので、今なら高校生でもできるようなものです。でんぷん溶液のような基質液に酵素を加えて経過時間ごとにサンプリングして分析すると言ったものですが、その結果がバラバラで10回ほど繰り返して測定しますが1点だけかけ離れた数値が出てしまい、どうしようかと困っているというものでした。

 

学生時代の実験から始まり、就職したのも発酵会社の技術部門ということでずっと酵素反応で仕事をしてきたようなものです。

実際に実験をしたということはそれほどは無いのですが、それでも重要な場面でやらなきゃならないということも数回はありました。

しかし、どうも実験が下手でなかなか数値が揃わず苦労したものでした。

それがいまだに夢にまで登場してしまうのでしょう。

 

さて、「酵素」というものが出てきたのでついでにその解説もしておきましょうか。

 

最近は「なんとか酵素」といった健康食品が数多く発売されており、テレビでのCMも次々と流されています。

しかしどうもそこでの「酵素」というものの取り扱いが、実際の酵素そのものとは何の関係もない記述になっています。

 

酵素とは主にタンパク質からなる分子であり、それが触媒として働いて特定の化学反応を促進します。

そのような化学反応と言うものが生命そのものであり、生物が生きている以上は酵素反応が起こっているのは間違いありません。

 

それが「年を取るとともに酵素が減るので補う」なんていうCMを流されると「なんじゃこりゃ」と思ってしまいます。

 

酵素はその一つ一つはそれぞれ「一つの反応」のみを触媒します。歴史的に最初に発見された「ジアスターゼ」は分類名は「アミラーゼ」と言いますが、でんぷんの一種アミロースなどを一段分解する反応を起こします。

アミラーゼにもαアミラーゼ、βアミラーゼ、グルコアミラーゼなどがあり、それぞれ触媒できる基質が異なる別の酵素です。

 

ジアスターゼは体内でもデンプンの消化に役立つということで医薬品として使われました。しかし、それはデンプン質を過剰に摂取して消化不良になったという場合にのみ有効であり、一般的に「健康に役立つ」なんていうものではありません。

 

デンプンを消化してエネルギー源とする生体反応の中には、「解糖系」と呼ばれる一連の反応があります。これは消化の途中で、グルコースが2分子のピルビン酸という物質になるという反応なのですが、古典的な生化学で研究され現在では大学の教養課程でも教えられているものです。

ペントースリン酸経路などいくつかの反応が知られていますが、グルコースが分解するという反応に対して10個以上の酵素が関わる反応が連続して起き、中間物質もその数だけ存在します。非常に複雑なのですが、その経路をたどると美しさも感じるものです。

 

NHKの「あさイチ」という番組でも以前に酵素というものの解説を試みたことがあり、そこで大学の先生が行なった説明に登場したタレントたちが驚いていたことがありました。どうも酵素というものを商売にしている業者の宣伝に皆惑わされてしまっているようです。

なお、「あさイチ」「酵素」で検索するとその番組の内容に対して業者の連中が反論しているものがたくさんヒットします。まあ中身はひどいもののようですが。

 

しかし、酵素実験というのはなんであんなにうまく行かなかったのか、専門でやっている連中はきれいな結果をパッと出していたのに、ふがいない思いをしたものでした。