著者は個別の地震についてではなく、地質学、地球物理学とからめて地震というものを大きく捉えるような研究をされているということで、プレートの大きな動きから地震を考えていくと、東日本大震災が起こり「これでしばらくは大丈夫」と考えがちな人々の思いとは逆に、これからそれに関連した地震の発生が続くという恐れが強いと考えられるそうです。
日本では余震というと震源の断層付近で本震での滑り残りのようなものを解消するように発生する地震と見られていますが、余震と言われるものの分布を詳しく見ていくと余震域は震源断層から大きく離れたところにも広がることが分かってきました。これらは「誘発地震」と呼ぶべきものですが広い意味での余震活動に含まれます。
地震が連鎖するのは地震というものは断層が地殻にたまった歪みにより起こされるものであり、その状態の変化が周辺部分の断層の歪みを大きくしてさらに地震を誘発するからです。この歪みの力をクーロン応力と言うそうです。
地震の大きさを表すマグニチュードという単位にはいろいろな定義があり微妙に違っているということは東日本大震災の時にも話題になりましたが、伝統的な気象庁マグニチュードと言われるもの、モーメントマグニチュードと言うもの、表面波マグニチュードというものなどあり、それぞれ特徴が異なります。
東日本大震災は直後にマグニチュード7.9と発表されましたが、これは気象庁マグニチュードによったためです。これは大きな地震で振幅が大きすぎると飽和してしまい正確に算出することができなくなるので、その後計算しなおしてモーメントマグニチュードでM9.0となりました。
このモーメントマグニチュードの計算には震源の断層の幅と断層のずれ量とが関わりますが、スマトラ沖地震のM9.1と比べて東日本は断層の幅でははるかに小さいものの、ずれ量が50mと言う予想外の大きさであったためにM値でほぼ等しくなったそうです。
小型の地震が頻発する地域では大地震は起こらないかと言うとそうではなく、M9の大地震というものは断層の大きさでピラミッドを作るとその頂点に立つもので、特別な役割があるのではないかと言うことです。
超巨大地震が起こることでプレート境界付近の応力解放というものが生じ、ストレスをいったん無くすというメカニズムがあり、それがその付近の地震活動も静謐にするということになります。
太平洋からのプレート圧力による地震が東日本大震災でしたが、東京付近には別の地震要因があります。首都圏ではM7程度の直下型地震が繰り返し起きており、記録が充実してきて以降にも何度も被害を受けています。
それは3つのプレートがせめぎ合っている「三重会合点」という、地球上に10か所程度しか存在しない地点が東京のすぐそばにあるからです。
ユーラシアプレートの下に太平洋プレートが年に8cm、フィリピン海プレートが年に3cmの速さで近づいています。このために日本の中でも特にこの地域には地震発生が多く、しかも複雑な動きで震源の深さも幅広くなってしまいます。
さらに、関東地方の直下に厚さ25km程度の「プレートの断片」があるということを著者は発見したそうです。これは太平洋プレートが途中で完全に分離されて乗り上げてしまったもののようですが、これがあるために地震発生帯を作り地震多発の原因となっているそうです。
東日本大震災の影響で首都直下型地震の発生の可能性は高まっているようです。
起こらないで済むということはないでしょうが、できるだけ被害が出ないことを祈ります。