上智大学の中野教授の書かれた「右傾化する日本政治」という本を読みましたが、事実のみの並べられたものながら、非常に正確に書かれていると感じ、参考になりました。
ただし、「なぜ政治ばかりが先行して右傾化しているように見えるのか」と言う点ははっきりとは書かれていなかったようです。(もちろん教授はお判りでしょうが、意見になってしまうので触れずにおいたのでしょう)
さすがに今になると権力者に追随するかのように我も我もと国家主義的発言をする者が頻出していますが、以前はさほどでもなかったように思います。自民党の老齢議員や閣僚がときどきとんでもない発言をしては、解任または辞任という騒動が時々起きていました。そういった発言を問題視するようなメディアの姿勢というものの強かったようです。
しかし、それらの議員を選挙で選び、そのような自民党政府を選び続けていたのは選挙民です。選挙民は皆そのような右傾化路線を支持したのでしょうか。
中にはそういった人もいたでしょうが、大部分はそうではなかったというのが私の受けている印象です。
私が選挙権を得てからは40年経ちますが、その間に選挙の争点として国家主義的な問題を挙げたことは一度もなかったのではないかと思います。
最近でも争点のほとんどは景気対策をどうするかばかりでした。
ここに一部の新右派勢力の主張が関係してきます。規制緩和を進めてその結果グローバル大企業ばかりが儲けるという新自由主義ですが、それが景気対策であると強弁して票を集めるということは実際に多かった事実かもしれません。
これはこのような新右派勢力ばかりではなく、没落していった左派勢力でも同じかもしれません。政治の基本姿勢を問うことなく、やはり景気対策だけが争点でした。
結局、景気対策でどちらの政党がマシかということを考えてながら投票している間に、国家主義を進めたい勢力は上手いことにそれを利用して自らの意志を通してしまいました。それを見抜けなかった選挙民が馬鹿だっただけでしょう。
口惜しいのは、その口先だけの景気浮揚策がウソだらけであることすら分からない選挙民が大多数だったことです。騙されるだけ騙されてもまだ夢を見ています。