爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「石油ピークが来た」石井吉徳著

石井さんの著作「石油最終争奪戦」は購入して読んだのですが、その約1年後の2007年に出版された本書は読んでいませんでした。一度読んでおこうかと手に取りました。

「もったいない学会」会長の石井さんの名前は、石油ピーク論というものを知るようになってすぐに覚え、ネット上のブログなどは常に参考にさせて貰いました。現在の私の考えの多くは石井先生に影響されていると言えそうです。

そのような石井先生の議論は何度も熟読しているので、実は本書に書いてあることもほとんど既知のことばかりであまり新味はありません。当然のことなんですが。

一応、本書の構成にしたがって並べてみると、「石油ピーク」というものがすでに来ているということ、さらに代替エネルギーとか新エネルギーと言われていますが石油を越えるエネルギーなどはないと言うことを強調しています。
さらに、著者が繰り返し主張しているように、「石油ピークは文明ピークである」ということを解説しています。
経済学者は資源が有限であるということを認めずに永遠の経済成長があるかのような議論をしがちですが、地球というものは有限である以上、経済成長も必ずストップする運命にあるということも著者の持論です。
このまま無策を続ければ近い将来に現代文明は崩壊することになります。それを回避するというための方策はこれも著者の持論の「日本のプランB」というものの採用ということにあります。これは自然と共存しエネルギー消費を最小限に抑えて本当の意味での「持続的社会」を作ることにあります。

本書は2007年の発行で、自民党参議院選挙で大敗した直後にあたります。これを著者は日本人がようやく覚醒し始めた兆候ではないかと期待をこめていますが、その後の成り行きは残念ながらまったく違っていたことを示してしまいました。
本書中に記述されていることで、前著「石油最終争奪戦」に関して、いろいろな読者からの反応があった中で「石油ピークを啓蒙するのはよいが、対策が書かれていない」という批判があったことに著者は驚いたと書かれています。現代文明が根底から揺らぎかねない大きな問題に対してそのように簡単に対策などあるはずもないと言う考えからです。
確かに、そのような文明を救うハウツーを求めてしまうという浅薄な考えの人々も問題ではありますが、しかしどうにかしなければならないのではないでしょうか。大きな問題ではありますが、ぜひ対策を具体化するという動きを期待したいと思ってしまいます。