爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「世界を騙し続ける科学者たち」ナオミ・オレスケス著

通常はこの欄は曲がりなりにもなんとか読了した本の感想を書いているのですが、この本ばかりは途中で放棄です。

最初の章でIPCCの報告書執筆の代表者というベン・サンターという人物を描写しているのですが、それがどうも文学的・叙情的な書きっぷりなので違和感を覚えました。「誰かに攻撃されることなどまずありそうにない人物」「穏やかな性格で政治信条も中道的」「物腰はとても謙虚で消え入りそうなほど控えめな話しかたをする」
それに対し、容赦のない不当な攻撃をした連中を非難するというわけです。
どうもこのような文章には不信感を覚えてしまいます。著者は科学者ではなかったかと思って経歴を見直してみたら「科学史家」だそうです。

ついで攻撃しているのがタバコが癌の原因であるという説に執拗に反抗してきた一部の医師・学者たちですが、彼らにはタバコ会社から多額の研究費が渡っていたというのは有名な話です。つまり、こういった連中と温暖化に異議を唱えている人々を同列に考え、それらは石油会社から金を貰って動いている御用学者だという論法です。

確かにそういった人々もいるかもしれませんが、全部がそうだということはないでしょう。
しかも今最大の問題点はIPCC自体が権威化しており、それ自体が利権の塊であり、その人々がとても科学者とは言えない行動をとっていることです。
ここで、以前問題化した「クライメイトゲート事件」を思い出しました。温暖化説の中心にいた人々の私的メールが公表され、その中でとても科学者であるとは言えないような行動が明らかになったというものです。

クライメートゲート事件を調べようと検索してみましたが、ウィキペディアは完全にIPCC派に乗っ取られているようで、検証の結果温暖化の証拠に間違いはないなどという提灯持ち記事ばかりです。これは英文ウィキペディアでも同様のようで、「この問題についてウィキペディアを参照してはいけない」と強調してあるサイトもありました。それはともかく。

問題は温暖化の証拠が妥当かどうかではなく、それに至る手法にひどく不当なものがあったという点です。査読つきの論文というところにIPCCがこだわるということもありましたが、それにも手を回していたという事実もありました。

といったわけで、本書はこれ以上読む気もなくなり打ち切りです。
しかし、御用学者という言葉に弱くそれを批判していれば喜んで読むという人が多いのも事実のようで、この本の書評を書いている人は好意的なものも多いようです。本当の「御用学者批判」と「実は自分が御用学者」というのは見分けないと危ないのでは。

なお、この本はこれまで同様、近くの図書館で借りたものだったのでまだ良かった。買ってしまっていたら泣くに泣けません。しかし、図書館で借りるときにもう少しじっくりと選ぶべきでした。今回借りてきたほかの本には、1年ほど前にしっかりと読んで書評まで書いた本をそれに気付かずまた借りてしまったものもあり、粗忽極まりない話でした。