爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「大隕石衝突の現実 天体衝突からいかに地球をまもるか」日本スペースガード協会著

スペースガードとは天体の地球衝突と言うことだそうです。この本は1998年刊行だそうですが、2013年2月にロシアのチェリャビンスク地方に隕石が落下し多くの被害が出たことがあり、加筆され急遽発行されました。

ロシアに落ちた隕石は直径17m、約1万トンの小惑星だったそうです。それでも秒速18kmの速度で進み上空約20kmで爆発しその衝撃で4000棟の建物に被害が出て負傷者が多数出ました。
車載カメラなどで多くの映像が撮られたというのも印象的でした。
この程度の大きさの小惑星では事前に発見することは難しいようです。また、隕石が鉄の塊のようなものではなく石質であったために上空でばらばらになったことや、進入角度が水平に近かったことで比較的上空で爆発してくれて、最悪のシナリオは回避されたそうです。もしも地上までそのまま突入していたらはるかに大きな被害が出たかもしれないようです。

地球は海が広い面積を占めているためにクレーターが残りにくいのですが、それでも巨大なクレーターは見つかっています。ユカタン半島のチクシュループ・クレーターと呼ばれるものは直径180kmというもので、イリジウムの異常濃集などの証拠から隕石によるものと分かってきました。しかもその年代が6500万年前とちょうど恐竜が絶滅した時期と重なったと言うことから注目されることになりました。
今の学説ではやはりそのクレーターを生じた小惑星の衝突が影響して多くの生物が絶滅した可能性が強いと言うことになっているようです。

他にもクレーターの痕跡は数多く残っており、また月などの他の天体を見れば非常に多数のクレーターが見られるので天体の衝突と言うのはそれほど稀なことではないということが分かります。衝突する天体と言うのは小惑星、彗星と言われるもので、太陽系には古くから知られている大きな惑星のほかに非常に小さいものからある程度の大きさのあるものまで多数の小惑星があることが分かってきました。
1801年1月1日(19世紀初めての日)にイタリアの天文台でセレスと呼ばれる小惑星が始めて発見されましたが、それ以降軌道が確定したものだけでも30万個以上の小惑星が発見されたそうです。これらの軌道計算から地球にどれくらい近づくのかと言うことは分かっており、2029年にアポフィスという小惑星が地表から3.8万kmまで近づくのが一番近いということで、とりあえずこの200年ほどの間には小惑星で衝突すると言うものは見つかっていないようです。
しかし、未発見の小惑星や彗星については分かりませんので絶対に大丈夫と言うことは無いということです。発見された小惑星というのはかなり大きいものだけですので、直径数百m以下のものは近づくまで分からないということもあるそうで、その程度のものであればかなりの被害が出る可能性はありそうです。

直径1km以上のものが衝突すると全世界的に大きな衝撃があるようで、例えばユカタン半島のものは直径10kmほどの小惑星だったようですが、それが秒速25kmで衝突したとすると直径180kmのクレーターが生じ、小惑星の重量の150倍もの物質がクレーターから放出され成層圏のさらに上の高さ50km以上まで塵で一杯になってしまうようです。その結果非常な寒冷化となり植物は生えなくなりそうです。
海に落ちた場合では、海水が4kmの高さまで上がりそれが津波となって全世界の海に広がっていくようで、まあ全世界破滅というのも当然でしょう。

小惑星の発見と言うことは国際的な観測体制の構築ということが進んでおり、プロ以外にもアマチュアの観測者も加わり毎日夜には実施されています。小さいものは地球のすぐそばにまで寄らないと見えないと言うこともあり、発見されるとすぐに世界的に通報され段々と夜になる地域の天文台が観察を続けることで正確な軌道を計算し地球に近寄るかどうかをできるだけ早く判定するそうです。

もしも地球に衝突しそうな天体が見つかった場合、どのような対策が取れるかということも考えられていますが、はるか遠くにある場合は少しだけ軌道をずらすだけで衝突を防げるわけですが、近づくほど大きく軌道を変えなければならず困難になってきます。その方法もやはり核爆発というのがもっとも激しい衝撃を与えられるということです。ただし、もしも全世界的に軍縮が進み核爆弾を放棄してしまったとするとその手は使えないということも有得るのですが、どうなるでしょうか。