爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「中世・ルネサンスの音楽」皆川達夫著

今から40年近く前、実家から大学に通っていた頃にはNHK-FMの朝6時台にバロック音楽ばかりを放送する番組があり、登校するのが遅い時間帯の日は目を覚ますと布団の中で聞いていました。
バロック音楽が主でしたが時にはルネサンス以前の音楽も選ばれており、この本の著者の皆川さんが話をされておられたのを聞いた覚えがあります。

キリスト教は音楽との深いつながりを持っていますが、特にグレゴリオ聖歌と呼ばれる中世の聖歌は今聞いても独自の感慨を呼び起こします。
法王グレゴリウスにその名はちなみますが、7世紀のグレゴリウスの時代に成立したとは考えられず、早くても8世紀ころのもののようです。

グレゴリオ聖歌は一つの旋律による単声音楽というものですが、10世紀ころからはヨーロッパの音楽は多声音楽(ポリフォニー)と呼ばれるものになって行きます。
録音されているわけではないので実際にどのような音楽だったかということは分からないことも多いようですが、いくつもの旋律が同時に鳴り響くというものだったようです。

その後、中世の体制から大きく社会も変わっていくと新たな文化の担い手も登場し、それがまた様々な音楽の発展にもつながってきます。
ルネサンス音楽というものは、美術がイタリア中心であったのに対し、ブルゴーニュやフランドル出身の音楽家が中心であったようです。キョーム・デュファイやジョスカン・デプレといった作曲家が活躍したそうです。
デュファイはバッハにも匹敵するという一世を風靡した作曲家だそうですが、今その名を知っている人は少ないのは残念です。

ルネサンス以降の音楽の発展では地域差も大変大きく、フランスのシャンソン・バレー好きやスペインの器楽好きといった特色も持ちながら、バロックに向かうことになります。

しかし、この本を買った30年以上前にはこれを読んでもその中に出てくる作品はほとんど聞くこともできず、文面から想像するだけでした。しかし、今は動画投稿サイトでその作曲家名を検索すると結構いろいろな曲を実際に聞くことができます。現に今はオケゲムの合唱曲を聞きながらこの文を書いています。便利な世の中になったものです。