爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「性格を科学する心理学のはなし」小塩真司著

心理学関係の本としては以前に富山大学の村上宣寛先生の心理学テストや知能テストに関するものを読みましたが、今回のものは中部大学准教授と言う小塩先生の本で、かなり新しい心理学研究の状況も紹介されています。

この本の副題は「血液型性格判断に別れを告げよう」というもので、そのような段階のことから話を始めなければいけないと言うこと自体が日本の心理学を取り巻く遅れた状況を物語っているのかも知れません。

血液型性格判断では、どうも特に悪く言われる血液型というものがあるようで、それは人種差別に当たるのですがそう指摘されてもまったく自覚の無いままの人が多いようです。
しかし、遺伝的に決まっているものについてあれこれと判定をするかのごとき行動は、肌の色などを取上げるのとまったく変わりのないことです。

そもそも性格と言うものを判定すると言うことはとても難しい問題を含んでいます。運動能力というとそれよりは簡単そうですが、これも走る・投げるだけではすまないものがあります。まして、性格に関する特性をどのような尺度で判断するのか、その点から心理学者は苦労して作ろうとしていると言うことです。

人間の性格を表すという方向で見ると、コンピュータなどで遊ぶゲームで使われているポイントが良い参考になります。ポケモンゲームなどで、ヒットポイント44とか、こうげき40とか、ぼうぎょ65といったポイントが決められていてそれでキャラクターを表すということになっています。
これがまさに性格の表現に使えないかという研究がされているようです。たとえば、「外向性」「神経質」「好奇心」などといった特性の要素を選び出し、それぞれのポイントを算定して総合的に表せないかと言うことです。
このような方向の研究が「ビッグファイブ」という理論で、5つの次元、「情緒不安定性」「外向性」「開放性」「協調性」「誠実性」という次元ごとにポイントを決めると言うものです。もちろん、その次元が独立しているかどうか、統合できるのではないか、別の次元があるのではないかと言う異論は数多くあるようで、まだ定まっているわけでもないようです。

なお、性格は年齢により変化するかどうかということについても研究がされているようで、昔は性格はほとんど変化しない「三つ子の魂百まで」という感覚で捉えられていたのが、最近の研究では相当変わっており、子供と青年、老年では性格もどんどんと変わっていると言うイメージができているようです。

遺伝と環境のどちらが性格により影響を与えるかと言うことについても、最近の遺伝子研究が応用されており、遺伝子も調べられてきていますが、そもそも性格の因子一つ一つが多くの遺伝子の影響を受けるようで、簡単な分析ではありません。

しかし、血液型の性格への影響というものの信奉者はまだまだ多いようで、心理学者というとそのような質問を多く受けるようです。著者が説明してもなかなか分かってもらえないようです。なにか理論らしきものがあり、それを個人の体験で追認してしまうと信じ込んでしまうようです。これも相当大きな心理的事例かもしれませんが。