爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

読書記録

「漱石の地図帳」中島国彦著

夏目漱石はその作品の中にその舞台となる地域の特性を反映させる描写をしていることが多いようです。 漱石は東京生まれで、一時は松山や熊本、ロンドンに滞在していたもののほとんどの時期を東京で過ごしました。 作品の中ではそれがどこかということを明示…

「山火事と地球の進化」アンドルー・C・スコット著

温暖化のせい?なのか、世界各地で大規模な山火事が発生しているといわれます。 その原因も失火や放火と報じられることも多いようです。 しかし、古植物学が専門で世界各地で木炭の化石を発掘し研究してきた著者から見るとかなり誤解が多いようです。 まず、…

「誰も知らない 世界のことわざ」エラ・フランシス・サンダース著

短い言葉で人生に役立つことを伝えてくれる「ことわざ」というものは日本には数多くありますが、それは世界各国でも同様のようです。 ただし、国により表し方にはかなり大きな差があるのは当然でしょう。 そのような世界各国のことわざというものを取り上げ…

「検証 安倍イズム」柿崎明二著

私は安倍政治絶好調のころからこの首相は日本政治史上「最低最悪」だろうと言い続けてきました。 今でもその思いは変わっていませんが、最近は現在のチンピラ首相の方がかえってタチが悪く順位が入れ替わるかもと思い始めていました。 しかし、この本を読ん…

「世界遺産と天皇陵古墳を問う」今尾文昭、高木博志編

古墳の中には「天皇陵」などとして宮内庁が管轄し、研究者などの立ち入りも厳しく制限しているものがあります。 しかしその「天皇陵」としての認定には多くの疑問もあり、中には実在の疑わしい天皇の陵墓とされているものもありますが、その疑問を晴らすため…

「農業崩壊 誰が日本の食を救うのか」吉田忠則著

食料自給率が低いということは言われますが、それ以上に日本の農業の状況というものは厳しいもののようです。 本書ではそれを3つの方向から見ていきます。 それが「小泉進次郎」「野菜工場」「農業への企業参入」です。 小泉進次郎が農政に関してどのような…

「生き物たちよ、なんでそうなった!?」五十嵐杏南著

生物の中には「どうしてそんな恰好なの」と言いたくなるようなものがあります。 だいたい、そもそも人間というものが体毛がほとんどなくなり直立二足で歩き回るという変な動物ですし、やたら動きの遅いナマケモノ、卵で生まれるカモノハシ、首の長いキリンや…

「名曲誕生の裏事情」山根悟郎著

作曲家も生活のためには収入を得なければなりません。 しかし作曲家が作った曲を楽譜や、その後はレコードなどとして売り出して収入を得ることができるようになったのは近代以降です。 それ以前には宮廷楽団で職を得たり、教会のオルガン奏者となるなどしな…

「もし幕末に広報がいたら」鈴木正義著

「広報」というのは最近ではどこの企業にも置かれている部門で、企業や政府・自治体、その他の組織で対外的な情報発信を行います。 本書著者の鈴木さんは数々の企業で広報を担当し、現在もNECパーソナルコンピュータの広報部長ということですが、「日経クロ…

「同時代ゲーム」大江健三郎著

最近筒井康隆さんの随筆などを読んでいて、筒井さんが大江健三郎さんに非常に大きな影響を受け、特にその「同時代ゲーム」を高く評価していたということを知りました。 そこで思い当たったのが、「この本は持っていたはず」ということです。 単行本は197…

「なぜ、あの『音』を聞くと買いたくなるのか」ジョエル・ベッカーマン著

音や音楽というものは人間の心理に大きな影響を与えます。 それが人の購買行動を左右するとも言えます。 そのような音の影響について、著者は様々な考察を課され「サウンド・マーケティング」を実践していきます。 著者のベッカーマン氏はアメリカで実際に音…

「宣教のヨーロッパ」佐藤彰一著

副題の「大航海時代のイエズス会と托鉢修道会」を見ると本書の内容が想像できます。 16世紀に始まるキリスト教改革運動に対抗してカトリックでも改革が進められその一環として異教徒への宣教活動を行うこととなります。 それはスペインやポルトガルの植民地…

「空気と人類」サム・キーン著

空気というものの重要性は現代人であればほとんどの人が知っているでしょう。 しかしちょっと昔には誰もそれを想像もできませんでした。 そのような空気というものについて、様々な方向から語っていきます。 地球の大気というものも地球誕生以来変わり続けて…

「ドビュッシーやワインを美味にするか?」ジョン・パウエル著

音楽というものは人間の心理に大きな影響を及ぼすということは誰でも同意できることでしょう。 それについて物理学者にして音楽家のパウエル氏が科学的に解き明かしていきます。 なお、パウエル氏の前著「響きの科学」という本は以前に読みましたが、そこで…

「グリーン資本主義」佐和隆光著

最近は脱炭素化という言葉が社会のどこでも聞かれるようになり、政界でも経済界でも皆がそちらに向かって走り出そうとしているかのようです。 ただしその方向性も手段も極めて怪しく、せいぜいグリーンウォッシュとしか言えないものも多いようですが。 しか…

「兄弟の社会学」畑田国男著

今は「男女」の差というものが大きな問題となっていますが、この本では「兄弟」という関係性が非常に大きいという立場から見ています。 なお、この本は1993年出版と実に30年も前のものであり、当時とは社会情勢も家族環境も相当違ってきているでしょう…

「まだ見ぬ地球外生命」山岸明彦著

生命というものは地球だけに限られたものなのか、宇宙には他にも存在するのか。 いろいろな学説があり、またそれを扱ったSF小説なども多数出ていますが、今のところなんの証拠もありません。 本書を著した山岸さんは分子生物学者ですが、一方ではSF小説の熱…

「レジリエンス人類史」稲村哲也、山極壽一、清水展、阿部健一編

「レジリエンス」とは「危機や逆境に対応して生き延びる力」のことを指します。 人類に限らず生物というものは常に危機や逆境にさらされ、その中で生き延びてきました。 生き延びることができた生物のみが子孫を残すことができたとも言えます。 そこで、レジ…

「民主主義全史」ジョン・キーン著

今の日本は民主主義であろうとは思います。 しかし民主主義とは、そしてその歴史とはと言われるとそれほどはっきりと認識してはいません。 そして今民主主義は独裁国家や全体主義国家により脅威を受けているとも考えられます。 そういった民主主義について、…

「城郭考古学の冒険」千田嘉博著

現在は城郭ファンとでも言うべき人々が増え、あちこちの城跡に多くの人が押し寄せるようになっています。 しかし千田さん(現在60歳)が大学生の頃に「城郭を考古学的に研究したい」と考えた頃はそのような研究者は居らず、周囲からも大反対をされたそうです…

「不良老人の文学論」筒井康隆著

筒井康隆さんも本書出版時の2018年で84歳、もはやSF小説だけにとどまらず文学界全体でも長老の域に達するようになりました。 いろいろな小説などについての書評を求められることも多く、また文学賞の選考委員としても活躍されていました。 そのような書評、…

「中国ナショナリズム 民族と愛国の近現代史」小野寺史郎著

中国では共産党政府に対する批判が強まると国民のナショナリズムを刺激して反日運動などで不満を解消させているようにも見えます。 そういった中国のナショナリズムはどのように形成されてきたのか、伝統的中国の世界観から説き起こし、清王朝末期から現在に…

「先生!」池上彰編

学校や教育についての問題は大きくなっており、教師や生徒、親たちだけでは抱えきれないほどになっています。 この本では池上彰さんが教育関係者だけでなく多くの人に「先生!」というキーワードで思うところを書いてもらおうと依頼した文章を集めています。…

「『幕府』とは何か 武家政権の正当性」東島誠著

幕府といえば、鎌倉幕府、室町幕府、江戸幕府があり、武家が政権を取った時の政府の名前だというのが何となく学校の歴史で習ったというのが普通の人の感覚でしょう。 しかし歴史の専門家たちにとっては結構議論のあるところのようで、様々な学説が飛び交って…

「ウクライナ侵攻までの3000日」大前仁著

2022年2月にロシアはウクライナに全面侵攻を仕掛けました。 世界は、特に日本ではそこからウクライナ情勢に注目するようになったようですが、実際にはそれ以前からロシアのウクライナへの働きかけは行われており、戦争状態にあったと言えます。 2014年にはウ…

「マナーの正体」さだまさし、酒井順子、綿矢りさ他著

様々な「マナー」について、13名の方々がエッセーを書いてまとめたというものです。 著者は、さだまさし、酒井順子、綿矢りさ、角田光代、逢坂剛、東直子、鎌田實、高野秀行、藤原正彦、乃南アサ、荻野アンナ、竹内久美子、福岡伸一という面々です。 お題も…

「公孫龍 巻三 白龍篇」宮城谷昌光著

中国戦国時代の思想家として有名な公孫龍の生涯を描く宮城谷さんの新刊です。 すでに巻一、二は読みましたが、月刊誌で連載中のものが溜まったら単行本とするようで、なかなか出てきません。 巻三では主人公公孫龍は三十代、燕の国で商人として活躍していま…

「会社法入門 新版」神田秀樹著

会社勤めをしていた身としては労働法はまだ関心がありましたが、会社の基盤に関わる会社法というのはほとんど実感としては関係ないようなものでした。 退職してからは一応広く見渡せることとなりましたが、それでも会社法という法律が規定することというのは…

「食文化からイギリスを知るための55章」石原孝哉、市川仁、宇野毅編著

イギリス料理と言えば不味いので有名などとも言われますが、実際にイギリスを知る人から見ればそうでもないという話もあります。 いろいろと食文化については興味ある点がありそうなイギリスですが、歴史から現状まで様々な面からそれを説明しています。 イ…

「ドードーをめぐる堂々めぐり」川端裕人著

ドードーといえば最も有名な絶滅鳥とも言われています。 インド洋の孤島モーリシャス島にのみ生息していたのですが、ヨーロッパ人が上陸し発見されてからわずか後には絶滅してしまいました。 その間、わずかな観察例がありまた数羽が捕獲されヨーロッパやイ…