爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

読書記録

「鬼平犯科帳(一)」池波正太郎著

亡父の愛読書であったこのシリーズを葬儀の後に形見として貰ってきてから何度か読みました。 それをまた最初から読んでみようと思い立ちました。 全巻揃っていますので、結構時間はかかりそうです。 これがその第一巻、長谷川平蔵が最初に火付け盗賊改め方に…

「ぼっちな食卓 限界家族と『個』の風景」岩村暢子著

岩村さんは家族の食卓の光景を調査しその家庭環境を分析するという活動を20年にわたって続けれ来られ、これまでも何冊かの本を書いています。 私もその前著は読んだことがあり、現在の日本の家庭というものがかなり危うい状況だと感じていました。 「家族の…

「ガリツィアのユダヤ人」野村真理著

ガリツィアというのは現在はポーランド南部とウクライナ西部を含む地域を指します。 その中心都市リヴィウの名はよほどの専門家でなければ知らなかったのですが、ロシアによるウクライナ侵攻では何度もニュースに登場するようになりました。 この地域にはか…

「古代東アジアの女帝」入江曜子著

東アジアでは男尊女卑の傾向が強かったのですが、それでも古代には女帝が出現した時がありました。 特に7世紀には日本、中国、朝鮮で女帝が君臨した時代でした。 それはどういった様相だったのか、日本の推古、持統など、朝鮮(新羅)の善徳、真徳、そして中…

「教養としての 日本古典文学史」村尾誠一著

日本の古典文学は1300年にわたり書き続けられてきました。 その幾分かは見聞きしていますが、詳細まではまるで頭に入っていません。 この本ではその文学史というものを時代を追ってみていきます。 分かったようなつもりでいたものでも、知らなかったこと…

「老後破産 長寿という悪夢」NHKスペシャル取材班

高齢者や低収入勤労者の状況は厳しいものがあります。 NHKではそういった人々の取材を重ねNHKスペシャルで何本か番組を放映しました。 その中の一つ「老後破産」についてを書籍として出版したものです。 数多くの人々に取材をしていますが、独居高齢者、要介…

「エネルギー大論争」バリー・コモナー著

アメリカは国内産の原油をフルに使って産業化を進めましたが、さすがに1960年代からその生産量は落ち、中東産原油の輸入を増やしていきました。 しかし中東戦争に伴う原油貿易の削減で起きた石油ショックで大きな影響を受けます。 それに対して当時のカ…

「どんマイナー武将伝説」長谷川ヨシテル著

戦国時代の歴史好きという人はたくさんいますが、それでもその興味の対象は非常に限られた範囲に留まることが多いようです。 しかし、戦国の世では多くの人々が文字通り死力を尽くして戦い、その才能を使って生き延びようとしていました。 あまり歴史の表舞…

「『人間とは何か』はすべて脳が教えてくれる」カーヤ・ノーデンゲン著

昔の人は人間の思考というものが心臓で行われていると考えていたようですが、現代ではそれが脳であることを疑うものはいません。 しかし脳の働きということはそれほど理解されていないことなのかもしれません。 この本ではノルウェーの神経科学者の著者が分…

「謎の漢字 由来と変遷を調べてみれば」笹原宏之著

漢字にはいろいろな謎があります。 その三つについて、詳しく調べていきます。 著者の笹原さんは日本語学者で、文科省の文化審議会の委員も務めたという方ですが、漢字の問題はかなり不思議なものを含んでいると感じています。 その三つというのは、 JIS漢字…

「認知バイアス事典」情報文化研究所著、高橋昌一郎監修

認知バイアスといえば行動経済学や統計の分野で人間の行動や認識に大きな影響を与えるものということで、よく目にすることが多くなっています。 そういったバイアスの事例を行動経済学、統計学、情報学の分野ごとに挙げて解説をしています。 なお、本書は「…

「最後の一文」半沢幹一著

小説というものは、最初の文章には非常に気をつかうのでしょうが、それと同じくらい、いや作家によってはそれ以上に気に掛けるのが「最後の一文」だそうです。 そこで様々な名作についてその最初の文章と最後の文章を並べてその意味を考えるというものです。…

「古代中国 説話と真相」落合淳思著

説話とは神話や伝説、民話などを指しますが、その中に自分の思想を伝えるためという意思を持つものです。 古代中国には古くから多くの文書が残っており、その中には司馬遷の史記に始まる歴史書も含まれますが、その他にも様々な書があります。 史書として扱…

「幻の麵料理 再現100品」魚柄仁之助著

明治以前の日本の麺料理といえば小麦粉を練ったうどんやそうめん、そばといったものだったのでしょう。 しかし現在では様々な麺が存在しています。 ただし、中華料理やイタリア料理などに由来しているようではあるものの、その原型からははるかに離れた日本…

「運動しても痩せないのはなぜか」ハーマン・ポンツァー著

太りすぎを何とかしようとして運動してもあまり効果が無いと言われます。 その理由がよく分からなかったのですが、この本では代謝学の最新の情報でそれを解説してくれます。 そこではこれまでの「運動すれば痩せる、食べ過ぎると太る」といった直感的な感覚…

「世界失墜神話」篠田知和基著

神でありながら地に堕とされる、殺される、そういった神話は世界各地に存在します。 一神教であるキリスト教でも神の眷属とみなされる天使が堕ちるという話を含んでいます。 そういった「神の失墜」について、比較神話学が専門という篠田さんが世界の神話か…

「民謡とは何か?」島添貴美子著

民謡というと、木曽節や八木節、五木の子守唄などが思い浮かびますが、そういった歌の中には意外に新しいものがあり、中には昭和になってから作られたというものもあるようです。 そういった民謡の歴史などについて、音楽学者であり特に日本民謡について研究…

「それはあくまで偶然です。 運と迷信の統計学」ジェフリー・S・ローゼンタール著

社会の出来事というものはほとんどランダムなものであり、それでどのように影響を受けるかということは個人の運というものなのですが、人はそこに何らかの意味があると考えがちです。 本書著者のローゼンタールさんは統計学者ですが、一般向けにも発信を続け…

「誤解されやすい 方言小辞典」篠崎晃一著

方言は各地で使われていますが、言葉の形は他の地方と一緒でも意味が全く違うということがよくあります。 そのため、方言を使っている人たちもそれが他の地域では別の意味と捉えられるということを意識していないことも多いようです。 この本ではそういった…

「インディ・ジョーンズ 炎の聖剣」マーティン・カイディン著

インディ・ジョーンズシリーズといえばジョージ・ルーカスが制作、スティーブン・スピルバーグが監督した有名な映画ですが、そのコンビで4作、さらにその後もう1作が作られています。 この本はその原作かと思ったのですがそうではなく、いわゆる「スピンオ…

「ミュージカルの歴史 なぜ突然歌いだすのか」宮本直美著

本書副題にもあるように、ミュージカルといえば登場人物がセリフをしゃべっている内に突然歌いだすというのが話の種にもなっています。 しかし考えてみれば普通の映画でもバックに音楽が流れているものが多いのですが、実生活でそのようなBGMが流れている状…

「〈メイド・イン・ジャパン〉の食文化史」畑中三応子著

日本食礼賛という風潮がもう長いこと社会を覆っているようです。 「和食」のユネスコ無形文化遺産登録ということもそれを後押ししました。 しかし、その「和食」と言われているものなど、どの時代、どの地域に存在したか、ほとんど無かったものだともされて…

「マナーはいらない 小説の書き方講座」三浦しをん著

小説家の三浦しをんさんはお名前は知ってはいてもその作品は読んだことがありませんでした。 しかしキャリアは長い?せいか、コバルト短編小説新人賞という文学賞の選考委員を任せられ何年も勤めていたそうです。 それで候補作を読んでいるとなかなかの渾身…

「上品なことば選び辞典」学研辞典編集部編

くだけた言葉ばかりを使っていると教養を持っているのか疑われることになります。 それで失敗しがちな人にくだけたぞんざいな言葉とそれに対して上品な言葉を並べ、使えるようになれば良いなという本です。 ただし、私もある程度の教養はあると思っています…

「ケルトの解剖図鑑」原聖著

ケルト人といえばヨーロッパの広い範囲に住んでいたものの、ローマ人やゲルマン人に追い払われ、アイルランドやウェールズにわずかに残っているといったイメージです。 しかし、その姿は研究が進むにつれてこれまでのものとは変わってきているようです。 こ…

「パレスチナ 聖地の紛争」船津靖著

昨年始まったパレスチナとイスラエルの衝突はさらに激しさを増しています。 しかしあまりにも多くのニュースがあふれている割にはその背景や経緯がよくわかっている人はそれほどいないのではないでしょうか。 この本は共同通信社の特派員としてエルサレムで…

「王の綽名」佐藤賢一著

ヨーロッパの王たちは「綽名」というものが広く用いられていました。 「太陽王ルイ」とか「獅子心王リチャード」といったものですが、他にも多くのものがあったようです。 これは、ヨーロッパの風習として同じ名前を持つ場合が多く、ルイ13世、ルイ14世など…

「時代小説の戦後史 柴田錬三郎から隆慶一郎まで」縄田一雄著

著者の縄田さんは文芸評論家として活躍していますが、特に対象としているのが時代小説ということです。 この本では時代小説の中でも戦中派と言われる世代の作家が書いたものを取り上げています。 その作家が、柴田錬三郎、五味康祐、山田風太郎、隆慶一郎の4…

「絵画と写真で掘り起こす『オトナの日本史講座』」河合敦著

学校で習う歴史の教科書にはいろいろな写真や絵画が挿絵として使われており、そのイメージは今でも残っているという人も多いでしょう。 しかしそれらの絵画や写真の意味というものは正確には知らないのではないのでしょうか。 その中に含まれている意味を知…

「これからの時代を生き抜くための 文化人類学入門」奥野克己著

文化人類学というと未開の地に暮らす種族を調査し、文明社会と対比してこのような暮らし方をしている人たちもいるということを示すといった印象がこれまでのものだったようです。 しかし、様々な社会の様式を見ていくと現代の先進国社会というものの方がおか…