爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

2014-05-01から1ヶ月間の記事一覧

「図解 錬金術」草野巧著

著者の草野さんという方は著者履歴がないのでよくは分かりませんが、他にも魔術などに関する著作のあるようです。錬金術と言うと卑金属を金に変えるというもので、詐欺師が多いというようなイメージですが、近世にはそのような傾向が強くなったものの元々は…

「ロビン・フッド物語」上野美子著

ロビン・フッドというと子供向けの本や映画のイメージが強いように思いますが、中世からイギリスで様々に扱われてきたということを、英文学専攻で東京都立大教授(当時)の上野さんが解説されています。登場人物にリチャード1世が居ることから、12世紀が舞台…

交通事故の原因について

「事故の心理学」についての本を読み書評を書きました。事故と言っても道路交通事故はその数も多大におよび、また年間数千人の人が亡くなっています。鉄道や航空機事故、工場の災害などが起こるとマスコミで大きく報道され、その原因などにもしも過失があれ…

「昭和レトロ語辞典」清野恵美子著

昭和という時代から早くも26年遠ざかってしまい、それを懐かしむと言う人もいて様々な活動もあるようです。 私は昭和29年生まれですので、物心ついた時から結婚し子供が産まれた位までは昭和という時代で過ごしてきました。本書の著者の清野さんは私より少し…

「事故と心理 なぜ事故に好かれてしまうのか」吉田信彌著

交通事故の心理学について長く研究されている東北学院大学教授の吉田さんが一般向けに交通事故と心理の関係について解説された本です。冒頭に挙げられているのは幼稚園の送迎に来た母親の車に別の園児がはねられたと言う事故です。それはたまたま著者のグル…

「西暦536年の謎の大噴火と地球寒冷期の到来」河合潤著

京都大学教授の河合さんはX線を用いた環境分析が専門と言うことです。火山の爆発が地球全体の寒冷化を招き、各地で異常気象を引き起こして人間社会にも大きな影響を与えたと言う例は数多く知られていますが、西暦536年にも大噴火がありその結果寒冷化したと…

山の名前

子供向けの世界地図をぼんやり見ていたら、「モンブラン山」「キリマンジャロ山」と書いてありました。 周知のように? モンブランはフランス語で「白い(ブラン) 山(モン)」、キリマンジャロはおそらくスワヒリ語(異論もあるようです)で「白い(キリマ…

「レ・ミゼラブル百六景」鹿島茂著

レ・ミゼラブル ああ無常と言えばビクトル・ユゴーの名作で最近も映画化されていますが、実際に小説を読んだという人はあまり居ないというものでしょう。 著者の鹿島さんもフランス文学の大学の先生ですが、ずっと読んでいなかったということだったのですが…

「日枝阿礼の縄文語」辻本政晴著

稗田阿礼は古事記の編纂者で、太安万呂がその言葉を書き取って古事記として書き表したと言われていますが、詳しいことはほとんど分かっていないようです。 そこで、本書はその阿礼が縄文語の話者であり、それの最後の残滓を安万呂が書きとめたということなの…

「食の世界にいま何がおきているか」中村靖彦著

ここで言う「いま」とは2002年当時のことですので、BSEについてもかなり現状とは異なります。アメリカで未確認だったために立場の違いと言うのも今とは異なるようです。著者はNHKの解説委員を勤めたあと大学に移ったようですので、ともすれば食の安全性につ…

「生態系ってなに?」江崎保男著

生態系という言葉は最近よく聞きますが、なんとなく自然のままといった語感で使われているのではないでしょうか。 動物生態学が専門の著者がいろいろと書き記しています。食物連鎖という言葉はよく聞かれると思いますが、それ以外に「腐食連鎖」というものも…

「黒人はなぜ足が速いのか 走る遺伝子の謎」若原正己著

両生類の発生学が専門という著者ですが、誰もが気付いているはずの「足の速いのは黒人ばかり」という事実について専門的に(ややむずかしいようです)解説を加えたものです。100mなどの短距離走、そして一方ではマラソンや10000mなどの長距離走ではオリンピ…

「”漢検事件”の真実」野田峯男著

漢検事件というと、2009年に持ち上がった漢検(漢字能力検定協会)にまつわるスキャンダルの事件で、当時の理事長親子が逮捕起訴され有罪となったというもので、その騒ぎは記憶にあります。 その概要は漢字検定の受験料を高く取ってそれを理事長が私的流用し…

「ピーター・フォーク自伝」ピーター・フォーク著

刑事コロンボの主演として有名なピーター・フォークの自伝です。2010年の出版ですがその頃にはピーターはすでに認知症だったようで、その翌年には亡くなりました。 文章はユーモアが溢れるように感じられるもので、コロンボの口調がそのまま感じられます。翻…

「石油をめぐる世界紛争地図」トビー・シェリー著

石油関係に詳しいジャーナリストと言うフィナンシャル・タイムズ所属のトビー・シェリーさんが、石油と天然ガスの現状と政治などとのかかわりについて解説したものです。 前書きにもあるように、取引全般についてや、これまでの石油メジャーの活動なども他書…

「水の環境戦略」中西準子著

最近では産業総合研究所でリスク論についての様々な仕事をされていたことで有名な中西さんですが、元々は東大の工学部で下水道に関する仕事をされていました。 当時の大規模な流域下水道というものを推進していた政府と、それに理論的な裏づけを与えていた当…

「電子メール・クライシス スパムメールとのあくなき闘い」野村総合研究所編

2006年出版の本ですので、若干の変化はあるかもしれませんが、まあ現在でも劇的に改善されたと言う話は聞きませんので状況は似たようなものでしょう。 インターネットなどを扱う本は技術の進展が極度に速いためにちょっと時間を置くと内容が意味がなくなると…

「医学と仮説 原因と結果の科学を考える」津田敏秀著

いまだに、「タバコの発がん性は証明されていない」などということを医者や専門家でも言う人がいるようですが、本書はこういった言葉がいかに間違っているかと言うことをはっきりと述べているものです。著者の津田さんは疫学が専門ですが、科学哲学というも…

「そんなバカな! 遺伝子と神について」竹内久美子著

動物行動学というものはできるだけ自然のままの動物の行動をじっと見つめて記録すると言う極めて地味な学問と言うイメージなのですが、その一方では非常に過激な理論を生み出します。 1976年にドーキンスが発表した「利己的な遺伝子」という本は大センセーシ…

「敗因の研究」日本経済新聞運動部編

スポーツの世界においては常に勝負と言うものを追求しており、特に一流スポーツマンではそれが言えますが、勝者が居ると同時に敗者も居るわけで、毎日のように敗者が生まれているとも言えます。 本書は日経新聞のスポーツ担当の記者が日ごろ取材をしているス…

「消費者の歴史」田村正紀著

神戸大学名誉教授でマーケティング・流通が専門と言う田村さんが江戸時代から現代までの「消費」と言うものの歴史を書いたものですが、当然のことながら消費者とはいってもその経済的な性質と言うものは社会制度や家族制度まで考慮しなければ正確な理解は難…

「代替医療」蒲原聖可著

代替医療というと、サプリメントや整体治療などや、鍼灸、漢方なども含むと言う知識はあり、玉石混交だなというイメージでしたが、アメリカ・ヨーロッパなど国によってもかなりの違いがあるようで、また中国、アジアアフリカなどでは代替医療に分類されるよ…

「鉄道の未来予想図」土屋武之著

最近は鉄道復権かと言うような動きも少し出てきたようにも思いますが、やはりまだまだ自動車優先の風潮が強く、鉄道ファンとしては歯痒い世相は続きそうです。 しかし、さまざまなしがらみもあってなかなか踏み出せないけれど、こうしたらもっと鉄道の魅力を…

「機長の700万マイル」田口美喜夫著

ながらくパイロットを勤められ、その後エッセイも多く発表された田口さんですが、もう亡くなられているようです。そのような国際線機長の体験をあれこれと書かれているものですが、私自身も飛行機に乗るのは好きでもありまた操縦にも興味があり、搭乗するた…

「中国のユーモア」寺尾善雄著

出版社勤務を経て著述業をされていた中国文学研究家の寺尾さんがユーモアという観点から中国の文学を選んだものです。 ジョークや小話のようなものかと思っていましたが、中には魯迅や郭沫若の作品もあり一筋縄ではいかないもののように見えます。小話はよく…

「再読:原子力と環境」中村政雄著

この本はちょうど1年ほど前に読んだのですが、最後の方の付け足しの読後感が悪く散々な評を書いています。 しかし、そこに至るまでの議論はさほど悪いわけではなく、一般には浸透していない面についてもきちんと判断しておられるようなので再読ということに…

「花の歳月」宮城谷昌光著

中国の漢の皇帝となった文帝の皇后は数奇な運命をたどってきたのですが、その弟の広国は幼くして誘拐され奴隷に売られたものの、姉が皇后となったために救われたという話は広く知られており、様々な小説となっているところです。 竇イ房は名家とはいえ没落し…

「核爆発災害」高田純著

著者は札幌医科大学教授で核爆弾の爆発による災害の専門家ということです。実験は別として戦争で核兵器が使われた唯一の被爆国の日本ですが、多くの人が亡くなったということは知ってはいても実態はなかなか理解されていないのかもしれません。 私も昔から「…

エネルギー文明論「化石エネルギー依存文明 (3) 石油供給の限界と文明の行く末」

そのエネルギー供給能力について問いかけているのが「オイルピーク論」です。これは元々はアメリカの石油生産量がそのピークを迎えるということをシェル社の研究員であったM.K.ハバートが1956年に見出したことに始まります。 これは石油に限らず、限られた資…

エネルギー文明論「化石エネルギー依存文明 (2) エネルギー依存文明の危うさ」

このような化石エネルギーの大量使用で発展してきた現代の文明ですが、いろいろの問題点を抱えています。最初に環境破壊の問題として出現してきたのが石炭を燃やす時の煤煙でしょう。石炭には不純物として窒素や硫黄を含みますので、燃やすとそれらの酸化物…