爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「生命の星の条件を探る」阿部豊著

地球上には生命が溢れていますが、太陽系の他の星にはどうやら無いようです。

それでは他の恒星の周囲ではどうなのか、銀河系でも数千億の恒星があるという話ですから、少しはあるのじゃないかと思いますが、はっきりしたことはわかりませんでした。

その条件とは何なのか、地球惑星科学の研究者が分かり易く解説しています。

 

まず、「水」が必要です。

しかし、水H2Oという物質でしたら宇宙のかなり広い範囲に存在しています。

問題は「液体の水」かどうかということです。

蒸発した水蒸気だけでも、固体の氷となっても生命には使えません。

この「液体の水」が存在できる環境というのは、かなり特殊な条件と言えます。

大気圧が1気圧とした場合で、0℃から100℃の間の気温でなければ液体とはなりません。

地球上ですら氷の状態である水がかなり多く存在します。

 

さらに、「水がずっと存在し続けること」も必要条件です。

太陽系の惑星でも金星や火星には水が存在していた(今も無いわけではない)証拠があります。

しかし、火星のようにその大きさが小さければ徐々に気体が散逸し、水蒸気としての水も同様に離れていってやがては水がなくなったと考えられます。

 

「地面が動くこと」も必要条件です。

地球ではプレートテクトニクスで地面が徐々に動いていることが知られています。

これは、地震や火山噴火を引き起こすやっかいなものと思われるかもしれませんが、地球内部と外部で気体の組成を保ち、気温を安定させるために必要なものです。

二酸化炭素は地上のカルシウムイオンと化合し炭酸塩となりますが、それがプレートとともに地中に引き込まれて行きます。

それで大気中の二酸化炭素濃度が減少するのですが、そのままでは温室効果が無くなり気温が低下します。

しかし、もう一つのプレート移動効果として火山爆発が起き、そのマグマとともに地中の二酸化炭素も噴出して大気中に放出されるのです。

これまでに、プレートの移動速度というものは速くなった時期と遅くなった時期がありました。

恐竜の居た中生代はプレート移動速度が速かったのですが、その時期には大気中の二酸化炭素濃度も高く、気温も今より6℃から14℃高かったと言われています。

ただし、それ以前の「遅かった時代」の跡は残っていないため、その証拠は残っていないそうです。

まだまだプレートテクトニクスの全容は分からないことが多いようです。

 

そのほかにも「大陸があること」「酸素があること」といった条件が生命が産まれて繁栄するために必要です。

 

このような状況が地球で備わったのは、地球誕生からの様々な条件がちょうどぴったりだったからです。

太陽系の誕生、そして地球の誕生から成長という歴史の中で、太陽からの距離、地球に集まった物質の量、そして地球の成長過程でぶつかっては同化していった微惑星の量と質などの条件がこれまで述べてきた生命誕生の条件に合っていたわけです。

 

なお、この地球も10億年くらい後には太陽のエネルギー放出が上昇し水が存在できなくなる温度を越えるために「永久に生命が栄える条件」は備えていないそうです。

まあ、人間がそこまで生き延びるわけもないのですが。

 

生命の星の条件を探る

生命の星の条件を探る

  • 作者:阿部 豊
  • 発売日: 2015/08/26
  • メディア: 単行本