栄養疫学の佐々木敏さんに、松永和紀さんがインタビューをした記事がよく掲載されていますが、今度は「乳酸菌が新型コロナウイルスに効くか」というタイムリーな話題です。
この話題については多くの専門家が発言しており、中には少し行き過ぎというものもあるようです。
まず、佐々木さんが指摘しているのは「免疫力を増強する」と言う風に使われる言葉「免疫力」は使わないということです。
医師や栄養士と言った人々でも少し安易に使いすぎているような「免疫力」ですが、実はその定義はまったく曖昧なもので、数値化もされていません。
NK細胞活性とか、IgA分泌といった専門用語とともに使われていますので、知らない人はごまかされやすいようです。
また、「新型コロナウイルス感染の予防に効果がある」食品やサプリは今のところまったく存在しません。
現在のサプリ等のCMでもさすがにこれをうたっているものはないようです。
感染が広がり始めてから1年も経っていませんので、研究が進んでいるはずもなく、まだ当分は結果が出てこないでしょう。
そこで問題になるのは「インフルエンザウイルスなどほかの感染症に効果があるから、新型コロナウイルスにもあるかもしれない」という論法で効能があるかのように称する場合です。
その中でももっとも期待されていると言えるのが乳酸菌でしょう。
乳酸菌摂取がインフルエンザウイルス感染の予防に効果があるかどうかをメタアナリシス（世界中の研究成果をまとめて分析したもの）したものが、2015年にコクランにより発表されたものです。
これによれば、乳酸菌摂取は上気道感染症の罹患について効果があるという結果になったのですが、ただしこの検討の対象となった研究に偏りがあり、多くが乳児や幼児などの小児科分野のものだったそうで、成人のものが少ないという問題があります。
また、日本のメーカーなどが実施した研究例はほとんどこの分析の対象とはされておらず、研究の質も低いものとみなされるのですが、それで効いたと主張しCMを流しているのが日本の状況です。
結局、乳酸菌の成人での上気道感染症の予防効果は「はっきりしない」という程度。
さらに「新型コロナウイルス感染に対する予防効果はわからない」としか言えないのが現状です。
記事中にもあるように、乳酸菌の効果は多くの企業や大学から次々と発表されていますが、それに反対する記事は掲載されない傾向が強いようです。
メディアの広告宣伝依存が強いため、スポンサー企業の不利になる情報は回避されるのかもしれません。
目にする情報の多くは乳酸菌が効果ありといったものですが、実際はそれほどはっきりとした結果が出ているわけではないようです。
