2000年以上前に書かれた「原論」はギリシャの数学者ユークリッド(ギリシャ名エウクレイデス)がまとめたと伝えられている数学書です。
実際は一人で書いたというわけではなく多くの数学者のグループがギリシャ数学の成果をまとめたもののようです。
古代のものとはいえ、その数学的な論理構成は現代数学までつながる基礎となったものです。
また、今でも有名な「ピタゴラスの定理」「ユークリッドの互除法」「ユークリッド幾何学」など、そのまま現代でも使われているものがそのままの形で示されています。
本書では、このユークリッド原論についてその読み方の紹介、現代数学からの回顧、初心者への手引きといった内容で書かれていますが、ほとんど数学的な記述に終始していますので、そのつもりで読まなければあまり理解できず面白いものでもないでしょう。
その中でも、話題として興味あるところを少しだけ引用しておきます。
平行線の公理(直線外の1点を通りその直線に平行な直線が1本あり、1本に限る)というものが原論の初めに紹介され、それに従って論理が展開されていくのですが、近代になりそれとは異なる幾何学、非ユークリッド幾何学が存在することが示されました。
最初はガウスが気が付いたようですが、慎重にもそれを口外することなく親しい人にだけ伝えて発表しなかったそうです。
そして、19世紀になりクラインが発表し形にしていきました。
球面上の幾何や、双球面上の幾何というものがそれにあたるそうです。
円錐の体積は同じ底面積を持つ円柱の体積の3分の1であるということは現代では学校でも教わる常識ですが、これを証明するには積分の知識がなければできません。
しかし、古代ギリシャでは積分は知られていなかったけれど、巧妙な方法でこの3分の1と言う数字を導き出したそうです。
三角柱と三角錐の体積の関係は幾何学的に導かれますが、そこから円に持っていくのには現代数学では極限を用います。
しかし、極限の観念が無かった古代では、背理法で矛盾を導き出して証明したそうです。
何かちょっとわくわくさせられるようなものがある数学の話でした。