消費税は昨年も増税され、8%から10%に税率を上げられましたが、この本は5%から8%に増税された2014年の直前、2013年に出版されました。
著者の高橋さんは財務省で活躍し、小泉内閣、第1次安倍内閣では改革の先頭に立ったのですが、その後政府を離れています。
そのためか、財務省に対しての敵対心は非常に強いようで、本書の各所にそれが見えています。
前回の消費税増税時も今回も同様ですが、その理由としては「財政再建」が含まれています。
しかし、これで財政再建ができるということは全く無く、あくまでも財務省の利権増強のためだけに行われています。
本書は「消費税増税では財政再建はできない」「財政再建は成長率拡大でなければできない」「日本の政治は財務省の支配下にある」「日本の財政は実はそれほど悪くない」といった主張を繰り広げています。
まあ部分的には真実が含まれていると感じますが、一番まずいのは「経済成長すれば財政も再建できる」というところでしょう。
もはや「経済成長」はできないという情勢が分かっていない。
そもそも、国債1000兆円をもたらしたのも「景気回復」すなわち成長率アップを狙って投入し続けてきた公共事業費などです。
それでも成長率は上がらないままであったのが、どうして今さら消費税を上げない程度のことで転換するのでしょう。
歴史的に「経済成長できた」時期は、新大陸の発見やアジアアフリカの植民地化で収奪するものができた時、そしてエネルギーの解放で作っても作っても伸び続けた(実はエネルギーも無限ではなかった)時に限られているわけです。
今の世界で経済成長するためには、他の国から収奪し自分のところに集めなければできません。最近の中国のように。
ゼロサムかマイナスサムの世界となっているわけです。
そして、今後の日本が他国から収奪できるような力があるわけもなく、経済成長も来るわけがないということです。
ということで、あまり読んでも意味のなかった本でした。