爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

PCR検査を増やせという主張ばかりが多いけれど

感度が70%にも届かないという、PCR検査による新型コロナウイルスの検出ですが、今のところこれしかその感染を知る方法がないため、もっと増やせといった主張ばかりが多くなっています。

 

これについて、検査の当事者の仙台医療センター、臨床検査科の西村秀一さんという方が書いていた記事がその実情についてよく分かるものと思いますので、紹介しておきます。

medical.nikkeibp.co.jp声高に論じる人の多くがPCR検査のことをほとんど理解できていないのは間違いないところで、西村さんの指摘は押さえておくべきものでしょう。

 

まず、「偽陰性」について。

PCR検査の感度うんぬんを言う前に、まず「検体採取」を問題とすべきなのはもちろんです。

西村さんの記事では「検体採取が下手」としていますが、そこまで言わないまでももともとこのウイルスの検体採取が現状で適当と言えるのかどうか、疑問があると思います。

 

「疑陽性」について。

これはPCRのもう一つの特性が関わってきます。

その遺伝子増幅の効率が極めて高いため、ほんのわずかな別ウイルスの混入、存在はしていても非常に少量な場合でも増幅してしまう可能性など、現実に発病するかどうかの量的な評価などはしにくいものだということです。

 

 

さらに、検査数を増やせという強大な圧力でどうなっているか。

今、PCR検査数を増やせという巨大な圧力によって実際に増えているのは、検体を採取する場所と人、検査に必要な機器のみである現状

政府自ら増やせ増やせの大号令ですが、これでやっているのはここに引用したものだけです。

歯医者さんでも採取可能といっても、結局は分析を直接する人材は考えられていません。

そして、これは直接検査を行っている西村さんならではの指摘でしょうが、

PCRは、POCTのイムノクロマトキットのように検体を入れれば、あとはほぼやることがない類のものではなく、μリットル単位で何種類もの試薬を、順番を間違えずに加えていく、技術力が求められる検査である。」

ということです。

今の検査機器は誰でも操作できるようになっているものも多いかと思いますが、PCR検査機器はまったくそのような物ではありません。

かなりの専門性と技術を必要としており、まだ誰でもできるといったものではありません。

 

今急にそのような人材を揃えろといってできるはずもありません。

 

さらに、もっと大変なのは「試薬が買えない」というものです。

RT-PCR検査において、通常はPCRによるDNAの増幅の前に必ずウイルスからRNA遺伝子を抽出する操作がある。そして抽出されたRNA遺伝子をDNA遺伝子に変換する逆転写(RT)のプロセスがある。この検査をするには、まずは「RNA抽出のためのキット」が必要である(注)。それとRT反応のための酵素と最終的にDNAを増幅させる反応のためのキットが必要である。この最後の複雑な反応のための酵素や基質等の入ったキットを、ここでは「PCR反応キット」と呼ぶことにする。

このように、RNA抽出キットとPCR反応キットという試薬のキットが必要なのですが、特にこの「RNA抽出キット」の入手が難しいということです。

 

これは現在すべてが輸入となっており、製造社もフル生産はしているのでしょうが、現在全世界で必要とされており、発注の20%程度しか納入されていないようです。

 

本稿最後に西村さんが書かれています。

「かくして大本営は言う「弾は各部隊工夫して調達せよ」と。」

検査担当者に無理強いしてもできないことはできません。