飛行機から見る地上の光景というものが大好きで、乗る時には必ず窓側の座席を取り、離陸時から着陸時までずっと外を見ている私ですが、天候に左右されることもあり、なかなかこれはという風景を見ることができません。
そのわずかな例を先日公開しましたが、
http://sohujojo.hatenablog.com/entry/2020/03/06/131323
そのような写真を本にしてしまったのが、今回読んだものです。
著者は須藤茂さんという方ですが、写真家ではなく地質学の研究者のようです。
しかしその写真は素晴らしいものです。
日本の山岳展望のハイライトといえばやはり富士山。
その光景は本書冒頭におかれ、角度を変えて何枚もの写真が掲載されています。
と言ってもその角度は航空路によってだいたい決まっているわけで、(完全に決まっているわけではない)それだけ色々な路線に搭乗したということでしょう。
私が一番数多く乗っている羽田熊本線ではだいたい左側のすぐ下に見えますが、九州行きでも目的地によって見え方が違うようです。
山岳風景ではやはり日本アルプスがその最高峰と言えるでしょう。
しかし、飛行機から見るということでは、中央・南アルプスは東京から関西以西に向かう航空路の多くがそのすぐ上を通りますが、北アルプス(飛騨山脈)は意外に間近を通る路線がありません。
本書の写真でも、ほとんどが関西空港から新千歳、中部空港から花巻、そして羽田から小松へ向かう路線でした。
本書写真No.164の「上高地上空から飛騨山脈」を撮影した写真は、私の公開した写真とほぼ同じ角度からのもので、やはり羽田小松便の右側の窓からのものでした。
(私の写真では上高地は入っていません。ルートが少し北にずれていたようです)
九州の風景ではやはりハイライトは阿蘇と九重でしょう。
これが間近に見られるのはやはり熊本空港離発着の便です。
ただし、以前は離発着時の写真撮影はデジカメ不可であったので、撮ることができませんでした。
今では可能になりましたが、問題は結構天候不順のことが多く晴れ渡ったことがあまりないことでしょう。
本書巻末の「撮影余話」にその辺のことも書いてあります。
今は搭乗前に座席指定もできますが、かつては乗る時まで分かりませんでした。
また、「窓がきれいかどうか」は意外に重要な要素でしょう。
窓ガラス(ガラスではないようですが)の傷が多くきれいに見えないということも良くあります。
またアルプス上空などの山の多いルートを通る際、微妙にずれることがあり期待の山が見えない(飛行機の真下になるとまったく見えない)こともよくあるようです。
これは運しだい。
当日の天気もまったく運任せです。
私も何百回と乗ってはいますが、本当に澄み渡っていてきれいに山が見えたということは数えるほどでした。
離着陸時でもデジカメ使用可となったのはごく最近のことです。
著者も以前はデジカメとフィルムカメラを2つ持ち、離着陸時はフィルムカメラで撮影ということをしていたそうです。
それでも、客室乗務員にフィルムカメラのことなど知らない人が居て、血相を変えて制止されたこともあったとか。
今は離陸時から撮影可能ですが、そうなった現在では私はほとんど飛行機に乗る機会もなくなってしまいました。
非常に美しい山岳写真、しかも登山ファンでもあるらしく細かく山岳同定までされており、大変参考になる本でした。
図書館で借りたのですが、自費で買っても良いかなと思えるものです。(私としては最高の賛辞です)