数多くのヒット作を作り出した漫画家の柴門ふみさんのエッセイですが、題名に「バカボンのママ」が登場するといってもその漫画の話ではありません。
「嫉妬」というものをかなり本格的に論じたものです。
「バカボンのママ」もあんなに美人なのになぜ嫉妬されないのかという面から取り上げられています。
「草食系」などと言われて、人間関係の感情なども「薄い」ものになってきたような感覚です。
しかし、「嫉妬」まで薄くなっているのでしょうか。
決してそんなことは無く、若い人たちの心理の中にも変わりなく誰かを嫉妬するという感情は激しく渦巻いているという見立てです。
徳島の経済的にも少し余裕のあった家庭の生まれだった柴門さんは、子供の頃は物的な嫉妬「あの子が持っているあれが欲しい」といった感情はあまり持たなかったようです。
しかし、親の愛情を邪魔するようなものに対しては激しい嫉妬心を持ちました。
幼児の頃に母親に連れられて行った病院で、母親がよその赤ちゃんを抱いた時には嫉妬で怒り出したそうです。
大きくなるにつれ、嫉妬心というものを徐々にコントロールできてきたのですが、中学の時に初恋をしてからは激しい嫉妬心に再び目覚めました。
やはり恋をするとどうしても嫉妬の感情が強くなるようです。
男性と女性と比べてみるとやはり女性は誰かと自分の「幸せ比べ」をしてしまうようです。
自分の持っていない幸せを誰かが持っていると嫉妬します。
特に、自分と同等か少し「下」と感じられる人がそれを得た場合、とりわけ「うまいことやって」手に入れたりすると強く嫉妬を感じます。
目立つべきではない場所、たとえば葬式などで美人である上にさらにそれを強調するような格好で現れる女性には激しい怒りのような嫉妬心を感じてしまいます。
それが「男に媚びる」ように感じられ、しかも多くの男たちがまんまとそれに騙されるのも嫉妬を掻き立てるのでしょう。
男の嫉妬も激しい場合がありますが、女のものと違い男は「成功」に嫉妬するようです。
それも「社会的な成功」というものが焦点となります。
これは男女の欲望の差によるもので、女は欲張り、男は勝ち負けにこだわるからと分かりやすく分類されています。
嫉妬の炎を消す方法というのも記されていますが、そんなにうまく行くもんかという思いがありますので、内容は記しません。
暗いドロドロの感情という印象の強い「嫉妬心」ですが、自分自身の例もあげて分かりやすく解説されていたと思います。
しかし、私も会社勤めの頃には嫉妬心というものを感じていたことが多かったと思いますが、今ではあまりその心理が働かなくなってしまったようです。
年を取ったということでしょう。