医者や科学者から見れば明らかに非科学的であることが分かるような主張をしていても、不思議に多くの人の心を掴むようなものがあります。
世の中にあふれるほどある「ニセ医学」というものもその信者とも言える人々を取り込んで勢力を広げています。
本書の著者は、開業医の桑満さんですが、「ニセ医学バスター」とも名乗っておりそのようなニセ医学に騙されてしまう人々を少しでも救いたいと考えています。
とは言え、そういったものに取り込まれやすい人々は「意識高い系」と言われることが多いようです。
自分や家族のためになることであれば、どんなことでもしようとしてしまうのですが、なぜか政府や大企業、大学などの社会の権威と言われるようなものには不信感を抱きその発表を信じようとしません。
ネットの進歩でいろいろな情報を手軽に集めることができるようになりましたので、そういった人々もネットで情報収集に励むのですが、なぜか怪しい情報ばかり集めてしまいます。
このような人々を「意識高い系」と言うようです。
これは、本当に「意識の高い人々」とは違い、努力を重ねて正当な知識を得ていこうという方向には向かわず、なぜかネットリテラシーだけは自分にはあると考えて情報収集に励み、テレビや新聞などの言っていることを鵜呑みにするような一般大衆とは自分は違うのだと思っているようです。
しかし、ネットでの情報収集をしっかりと考えている人ならよく分かるように、知識の無い人が知識を得ようとしてネットを触ると変な情報ばかりが上位に来てしまいそれを信じると大変なことになるのですが、それが分かっていない人が多いようです。
なお、そのような意識高い系の人たちで、「ニセ医学」を信じ切ってしまうと、他からの正しい知識などにも反発してしまうようになります。
したがって、本書もそのような信者たちに読んでもらおうとは思っていません。
その周辺に居て、なんだか変だと思っている人たちに少しでも正確な知識を知ってもらい、意識高い系のニセ医学信者たちに引き込まれないようにしてもらおうということです。
最初の「ハマり度チェック」で自分の状態を知ることもできるでしょう。
「合成添加物を毛嫌いし、レトルトやインスタント、冷凍食品は食べない」
「ワクチンは打たない。子どもにも打たせない」
「皮膚炎がひどくなってもステロイドは絶対に使わない。子どもにも使わせない」
「出産後は完全母乳にこだわる」
「必要以上に放射能を怖がる」
「電磁波を嫌う」
もちろん、これにイエスと答える人はすでにニセ医学に相当ハマっているということです。
数多くの「ニセ医学」、(医学分野以外のものも一部取り扱われています)がやり玉にあがっています。
酵素栄養学、デトックス、母乳信仰、原発事故と甲状腺がん、EM菌、反ワクチン、反ステロイド、ホメオパシー、波動、水素水、等々です。
これらの布教には医師や科学者という肩書を持った人々も関わっていることがあり、それに騙される人もいるのですが、それを金儲けの手段に使っている人もあり、また狂信的に信じ込んでそれをする人もあり、肩書だけで信じると危険なことも多々ありそうです。
なお、そのようなニセ医学を利用する人々がターゲットとしやすいのが、母親や妊娠中の女性などで、子供の安全に過敏な人たちです。
その心理につけ込んで引き込もうとする態度だけ見ても悪辣であることは明らかです。
ニセ医学に騙されないためのポイントも紹介されています。
「好転反応」と言いだすのは間違いなくニセ医学
「なんでも治せる、がんでも治せる」もそう。
「海外では当たり前、日本は遅れている」というのも決り文句。どうせ海外のことなど誰も知らないと高をくくっている
といったところです。
ニセ医学というものの主張の間違いなどポイントを分かりやすく説明されていて、ある程度の読解力があれば理解しやすい本だったと感じました。