本多勝一さんはかつて朝日新聞社記者として世界各地の取材をもとに、「戦場の村」や「南京事件」といった本を出版し、問題を提起し続けていました。
その後「週刊金曜日」という雑誌を出版し、その編集委員は今でも続けているようです。
しかし、その本多さんもこの本の出版時(2012年)で80歳を越えました。
新たな取材ということはもはや難しくなっていたのでしょうか。
本書は、「ロシアとの領土問題」「アメリカの日本支配」「マスコミとジャーナリズム」といった問題について、「週刊金曜日」誌上に発表した文章を主にまとめたものです。
ロシアとの領土問題については、その原点が第二次大戦集結時のソ連の不法占拠によるものであり、しかも日本の正当な領土とされるべき範囲は、政府が言うような北海道の一部であることが当然である歯舞・色丹は言うに及ばず、国後択捉といった南千島だけでなく千島列島すべてが含まれるというものです。
マスコミ問題では、いまだに「朝日新聞」を攻撃する右翼等が多いようですが、元朝日新聞記者であった著者から見ても現在の朝日新聞はもはやジャーナリズムの名に値しないようなものに変質してしまったということです。
ジャーナリズムとして批判的精神を見せられる新聞というものはもはや日本には存在しません。
かろうじてそれに近いのは、既に「赤旗」だけになってしまいました。
ただし、あくまでも赤旗は日本共産党の機関紙ですので、ジャーナリズムと呼ぶわけには行かないということです。
新聞の記者に必要なのは「ルポ」を書くことですが、今ではテレビの取材チームの方がよほど現場に出かけており、現場に行こうともしないのが新聞記者だとか。